みなさん、こんにちは。
日本で唯一の「ゆるベジらく膳料理教室」【ベジ楽】の林かよこです。
福岡・姪の浜で今日も「ゆるベジらく膳料理」を楽しんでいます。
今日のテーマは「白菜」です。
お鍋に欠かせない白菜は冬野菜の女王だと思うのです、わたし。
王様ではなく、女王。
あの色と曲線がドッシリした女性を思わせる、というのが理由です。皆さんはどう感じられますか?
■白菜はどんな野菜ですか?
白菜はあの葉の巻き具合が特徴的です。「結球」といいます。
アブラナ科の野菜で、クセが少ないのでいろいろな食材との相性の良さが一番の特徴かもしれません。
だから、お鍋に向いているのだと個人的には考えています。
お鍋って、ある種カオスのようなところがありますよね。お肉もお魚も、場合によっては揚げたお餅も(好きなんですよ、揚げ餅)、練り製品も、野菜も各種入ります。
それを上手にたんぱくな白菜がまとめてくれます。
お鍋のイメージが強いせいか、和食で調理するもの、と思われている方が多いように思います。それも、加熱しなくては、と思われる方も少なくないようです。
お漬物として生の白菜を食べるけれど、「自分では漬けないから(生では調理しない)」という方もいらっしゃいました。
なるほど。
どれも一理あります。ですが、ベジ楽としては「それはちょっと勿体ない」と思ってしまうのです。
先ほど書いたように、クセのない野菜です。だから、洋食にも合います。中華にも。
たとえば…ロールキャベツの代わりに「ロール白菜」。クリーム仕立てでグラタンにも。
中華はイメージしやすいですね。ごま油との相性がよいので、炒め物にもおすすめです。
あとは、生ももちろんおすすめです。
サラダでもいいです。組み合わせるなら、リンゴがいいですよ。
おつまみにするなら、チーズと重ねてピンチョスのようにするのもおすすめです。
ただ、どの食べ方であっても軸の部分と葉の部分とでは固さが違いますから、加熱時間や塩をしたときの浸透する時間に違いが出ます。その違いには注意を払うようにしてくださいね。
■最近の白菜は多彩です
白菜…実はいろいろな品種があることをご存知でしょうか。
外側と上の部分が淡いグリーンで、下部の内側が白。これが一般的にイメージする白菜だと思いますが、内側が鮮やかな黄色(オレンジ色)のものもあります。
それから、結球していないタイプも。
半結球といって、中途半端な形に見えるかもしれませんが、もともとそういう品種もあります。
また、もともとアブラナ科の野菜なので交雑しやすいという特徴があります。
だから、地方地方でいわゆるご当地野菜として食べられている白菜の仲間はたくさんあります。
「べか菜」や「長崎白菜」といったものがこれに該当します。
ほかに変わり種としては、紫色の白菜も。これは、煮るより生のほうが色が美しくきれいです。煮ちゃうと紫の良さがあまり生かされないような…。わたしの研究不足かもしれませんが。
白菜を大きな野菜だと思っている方も多いでしょう。
「ミニ白菜」と呼ばれる小型の品種も出回っています。ご家族の人数が少ない場合は、食べきることを重視してミニサイズを買われてもいいですね。
なお、白菜はできだけひと玉丸ごと購入されたほうがいいと思います。
1/2にカットしたもの、1/4にカットしたものなどがありますが、これらは買ってすぐに食べきるならともかく、そうでない場合は葉の水分が抜けやすく鮮度が落ちやすいのであまりおすすめはしません。
白菜は丸ごと買って新聞紙に包み、さらに上からビニール袋で覆って冷蔵庫の野菜室で保存。これでかなり鮮度が保てます。挑戦してみてください。
■白菜の歴史
ここまで白菜を「食べる」視点から解説してきました。白菜はアジアでよく食べられている野菜ですが、実は日本における歴史はそう古くありません。
本格的な栽培が始まったのは、日清・日露戦争の頃だったと言われています。
当時、日本軍に従軍していた人が中国大陸から白菜の種を持ち帰ったのが始まりです。
この「種を持ち帰る」行為って、今ではかなり問題です。
余談ですが、種(たね)を守ることは野菜に限らず、種(しゅ)の保存の観点から言っても大切なことです。
まして、農産物の種や苗を勝手に自国に運んで栽培して…なんていうのは、NGです。というか、言語道断。犯罪行為にも等しいかもしれません。
当時は戦争中だったこともありますし、農産物を守るという意識がそこまで高くなかったので仕方がないのだと思いますが。
わたしが知らないだけで、当時もきちんと手続きを踏んでいたかもしれません。それについては調べたのですが、資料を見つけられませんでした。もし、ご存知の方がいらしたら教えてください。
もっとも、わたしたちが現在、美味しい白菜を食べられるのはこの歴史があったから。
複雑な気もしますが、ありがたく美味しくいただくことにしています(結局、食べるのね、という声が聞こえてきそうですが)。
中国では古くから食べられてきており、『本草綱目』には「腸と胃を通利(つうり・消化を助ける)する。胸の煩(はん・不快感のこと)をのぞき、酒渇(しゅかつ・要するに二日酔い)を助ける」とあります。
かなり古くから薬効の高い野菜として認知されていたことがわかります。
■ゆるベジらく膳料理的 白菜の栄養①
続いて、白菜を薬膳の視点から考えてみましょう。
薬膳で白菜は「寒・甘」に分類されます。
「寒」の性質を持つ野菜は、身体の余分な熱を取り除いてくれます。胃腸が健全にはたらいていないとき…とくに胃もたれや胸焼けをしているとき…には、余分な熱を持っていることが少なくありません。そんなときに胃腸の熱をとりのぞき、スムーズに胃腸が動くようにしてくれます。
また、余分な熱はときとして便秘の原因になることも。さらに便秘は頭痛を引き起こしたり、腹痛を引き起こしたりします。さらにさらに、肌荒れの原因にも。
これらを改善するのが、寒の性質のある白菜なのです。
冷え性の方の場合、「寒」という性質にはちょっと注意が必要です。
散々「生食も美味しい」と書かせていただきましたが、身体が冷えている方や冷え性の方についてはなるべく加熱して召し上がることをおすすめします。
漬物などにした場合、鷹の爪を一緒に漬けるのは寒と辛(唐辛子の性質で、身体を温める役割があります)の組み合わせになっておすすめです。
「甘」の性質は、胃腸をいたわる力があります。
寒の性質と相まって、胃腸を健やかな状態にしてくれるので、消化吸収を高めてくれます。
それだけではありません。甘は、同時に胃腸にうるおいを与えることを意味しています。
胃腸は喉や肺にも繋がると考えるのですが、喉や肺がうるおっていると風邪のウイルスに対抗できます。風邪対策です!
さらに、水分代謝を高めてくれる力もあります。
身体のなかにとどまっている余分な水分を排出してくれるので、むくみにも。そして、二日酔いにも。
この二日酔いに対するはたらきは、『本草綱目』にも書かれていましたね。本当に先人の知恵には脱帽します。こういうこと、どうやってわかったのでしょうね。経験値?
■ゆるベジらく膳料理的 白菜の栄養②
現代栄養学からの白菜の栄養を考えてみましょう。
白菜は白く、単色野菜のせいか、栄養があまりないように考えられることもあります。
確かに人参や春菊のように「カロテン」がたっぷりというわけにはいきません。
ただ、食物繊維については素晴らしいですよ。
食物繊維…そうです、排泄に大いにプラスにはたらきます。ストレートに言ってしまえば「う〇ちぶりぶり効果」です。
カリウムも含まれているので、これまた水分の排出(尿)によくはたらきます。
不思議なのですが、薬膳から見ても、現代栄養学からも見ても、野菜の栄養や身体に嬉しいポイントがかなり似ているケースが少なからずあります。これは本当に不思議でおもしろいことですね。
■白菜ラストスパート!
白菜の旬は11月から2月。そう、もう間もなく終焉を迎えます。
結球している品種や半結球の品種であっても、旬はあまり変わりません。もっとも白菜は基本的に1年中出回っていますが、美味しいのはやはり旬を迎えるころです。
なお、美味しい白菜の見分け方ですが、外葉が生き生きとみずみずしいものを選びましょう。それから、結球していることが前提の品種の場合(ほとんどがこれに当たります)、白菜を真上から見てみてください。
葉がギュッと固く折り重なっているものが美味しいです。
そしてもうひとつ。これが一番わかりやすいのですが、重さをチェックしましょう。
右手と左手にそれぞれ白菜を持ってみると、当然ですが片方が重く、片方を軽く感じます。この場合、重いものを選ぶのが絶対正解! 瑞々しく甘い白菜を食べられます。
白菜の旬も残りわずか。
駆け込みでたっぷり召し上がってください。