日本で唯一の「ゆるベジらく膳料理教室」【ベジ楽】の林佳代子です。
福岡・姪の浜で今日も「ゆるベジらく膳料理」を楽しんでいます。
今日のテーマは「アサリ」です。
とくにレッスン中にご質問をいただくことの多い「失敗しないアサリの砂抜きのコツ」にフォーカスしてお届けします。
Contents
■アサリの旬はいつですか?
アサリは春に美味しい魚介のひとつです。
潮干狩りの経験のある方はご存知だと思いますが、潮干狩りのシーズンは春。関東地方でいうなら、4月から5月のころです。
わたしが暮らしている福岡エリアもそんなに変わりません。
千葉などに比べるとスタート時期が春休み頃と、少し早い印象がありますけれど、多少の違いです。今年の冬は暖冬だったので、もしかしたら早まるかもしれませんけれども。
余談ですが、福岡に暮らしてビックリしたことのひとつが、「潮干狩りが無料でできる!」ということ。関東で潮干狩りを楽しもうと思ったら、入場料がかかりますし、場合によってはアサリを持ち帰るのに「持ち帰り料」がかかります。
「えええっ! タダなの?」と、かなりビックリしました。
激込みする海岸(とはいえ、千葉の潮干狩りスポットよりは空いています)を見ると、なんとなーく気持ちが萎えてしまい(すみません)、「にぎわっているなぁ」と遠目に見て終わる…これを福岡に暮らして以来続けています。
我が家から海はかなり近いので(徒歩圏内)、その気になればいつでもいける、という感覚もあるかもしれません。
と、話がそれましたが、まさに春の到来と共に美味しくなるアサリが、本日のテーマです。
■アサリの砂出し(砂抜き)、どうしていますか?
アサリを調理する際に、レッスンで必ず話題になるのが「砂抜き」です。
「砂出し(砂抜き)ってどうやるんですか?」「砂出し(砂抜き)済みっていうアサリを買っています」などなど。
いろいろな意見を伺います。
共通しているのは、「砂出し(砂抜き)をしたほうがいい」とは思うものの「どうやったらいいのかわからない」という気持ちです。
というわけで、ここでは砂出し(砂抜き)についてもう少し詳しく書いてみます。
◇そもそも砂出し(砂抜き)ってなに?
砂出し(砂抜き)とは、アサリの身体の中に入っている砂を取り出すことをいいます。
もともとアサリは海水の下、砂の中で暮らしています。
呼吸をするたび、食事をするたび、アサリの身体には砂などが含まれてしまいます。これをそのまま調理すると、食べたときに「ガリッ」というイヤな感触を味わうことになってしまいます。
あー、あのジャリジャリ!
思い当たる方もいるのではないでしょうか。
お世辞にも「心地よい」とはいえない感触です。
砂出し(砂抜き)とは、このジャリジャリ感を払拭するための下準備、と考えてください。
◇具体的に砂抜きはどうする?
アサリの砂抜きは、アサリの生育環境を知ることから始めましょう。
アサリは海水で暮らしています。なおかつ、砂の中にもぐって暮らしています。
まずは、その環境を整えましょう。
ん? どういうこと? アサリを飼うわけじゃないんだけれど。
そんな声が聞こえてきそうですね。
確かに飼育するわけではないのですが、アサリが呼吸して活動する状態を作ることで体内の砂などを吐き出させることが目的です。だから、アサリの暮らしやすい環境を整えます。
まずは海水の準備です。
海水といっても、潮干狩りの場所で海の水をバケツ等に入れて持ち帰ったものを使うのはNGです。そもそも海水に含まれている不純物がアサリに入り込んでいるのですから、海水を使っては意味がありません。
海水と同じ塩分濃度の水を用意してください。
海水の塩分は3%です。
つまり水100gに対して3g、水1ℓに対して30gの塩を加えて作ります。容器はボウルでもバットでも構いません。
以前、深さのあるものより、アサリが重ならない平べったいものがよい、と習ったことがあります。アサリが重なることで、吐き出した汚い塩水を別のアサリが吸ってしまうから、というのが理由です。
どちらも試してみましたが、正直なところ、あまり差を感じませんでした。だから、わたしはあまり容器の形にはこだわってはいません。
さて、「きれいな海水(もどき)」ができたら、アサリを入れます。
さらに、アサリは砂の中で暮らしていることもポイントです。
つまり、暗い場所が好き。
海水(もどき)と、アサリを入れた容器の上に新聞紙(1日分)を覆うようにドサッと置けば、暗い場所ができあがります。
そのまま4~5時間おけば、アサリがしっかり砂を吐き出していることがおわかりいただけると思います。海水(もどき)がとても汚れていますから。
なお、「砂抜き済み」と表記された商品であっても、同様に砂抜きをしたほうが美味しくいただけます。
■アサリの年齢を知っていますか?
これは調理とは直接関係のある話ではないのですが、豆知識的情報としてご紹介します。
アサリの年齢は貝を見るとわかる、ということをご存知ですか?
アサリをよーく見てみると、縦と横に細かな溝が入っていることがわかります。
この「横に入った溝」で年齢がわかるのです。
いってみれば、樹木の年輪と同じなのです。
毎年、横の溝が1本ずつ増えていくので、その溝の数を数えればアサリの年齢がわかる、というわけです。そして、出回ることはないだろうけれど、あまり小さいもの(年齢を重ねていないもの)は環境保全の意味でも食べたり採ったりしないで、と教えて頂いたことがあります。
教えていただいたのは、千葉県にある東京湾漁業研究所の研究員さん。アサリの研究をしている研究員さんに取材したときに砂出し(砂抜き)の方法から、アサリの年齢までいろいろなことを教えて頂いたのです。
専門家がいうのだから、確かな方法! というわけで、取材以来、わたしは研究員さんの教えを忠実に守っています。
■実際に食べてみましょう
砂出し(砂抜き)をして、食べる準備が整ったら、いよいよ調理です。
アサリに限らず、貝全般に言えることではあるのですが、しっかり洗ってから調理しましょう。
アサリの場合、貝と貝をこすりあわせるようにしっかり洗います。これによって細かな部分についた汚れも落とすことができます。
■ゆるベジらく膳的 アサリの栄養①
アサリを薬膳的視点から考えてみましょう。
アサリを薬膳で分類すると、「寒・鹹」に分けることができます。
寒は身体を冷やす働きがあります。とくにアサリが旬を迎える春は、薬膳の世界では熱が上半身にこもりやすい、のぼせやすいと考えます。
だから、身体をクールダウンする寒の性質のアサリを食べることは理にかなっているのです。
なぜ、春はクールダウンする必要があるのでしょう?
わたしたちの身体は冬の間、省エネモードで動いています。寒さが厳しく、食物も少ない季節なので余分なエネルギーを使わずに過ごせるようになっているのです。
ところが、これが春になると一転します。一気にエネルギーを放出する方向へ身体がシフトします。それまで身体の内側にためんこんだ老廃物を放出して、身体を活発に動けるようにギアをシフトチェンジしていくのです。
このとき、全力ではたらくのが「肝」です。現代医学でいう肝臓と同じように考えてください。
肝は解毒のためにはたらく臓腑のひとつ。全力でデトックスのために働いています。
また、同時に肝は血液を貯蔵する役割も果たしています(あくまでも薬膳的考えです)。デトックスに力を注ぎ過ぎると、当然ながら血液を貯蔵するという役割を存分に果たせません。結果的に本来肝に収まっているはずの血が上昇したままになってしまいます。
春先って頭が痛くなったり、鼻がムズムズしたりしませんか? これこそ、肝に貯蔵されるべき血が身体の上の部分(上半身)に高ぶっている証拠だと考えられます。
春は血が騒ぐ、と表現することもありますが、まさに「血がザワザワしてしまう」ということなのですね。
そんなときだからこそ、アサリの持つ「寒」の性質はとても嬉しくありがたいのです。
アサリにはほかにも、精神を安定させる力があります。なにかと緊張することの多い春だからこそ、リラックス効果は嬉しいポイントです。
鹹はおもに海の食べ物が持っている性質でもあります。
鹹には「排泄をスムーズにする」という役割があります。排泄がスムーズだと心も身体も軽く感じますね。
また、余分な水分をきれいに排出できることは、むくみ防止の観点から言ってもプラスになります。
アサリが春に旬を迎えることは、わたしたちの身体が冬から春へ変わる時季からいってもとても嬉しいことです。というより、自然の摂理はすごいなぁと改めて感じます。
■ゆるベジらく膳的 アサリの栄養②
アサリは現代栄養学の観点からいっても、とても素晴らしい食品です。
おもしろいことに、薬膳的視点から考えるアサリの力と、現代栄養学の観点から考えるアサリの力はとても似ています。
薬膳ではアサリは肝を補う(助ける)と書きましたが、実はアサリに含まれている「タウリン」という成分が肝臓の働きをサポートする栄養素なのです。
「タウリン〇mg配合」と書かれている栄養ドリンクを見かけることが多いのですが、これも肝臓ケアを意識してのことだと思います。
さらに、鉄分がとても豊富です。赤血球をつくりだすのに、わたしたちの身体はビタミンB12が必要だと言われていますが、アサリにはこのビタミンB12がたくさん含まれています。
なるほど! これは食べないと損ですね。
■アサリを調理するときのコツ
アサリは長く加熱すると、固くなってしまいます。
長く加熱せず、さっと調理してください。さっと調理したアサリはふっくらとしていて本当に美味しいですよ。
お味噌汁にする場合は、だしがたっぷり出るので昆布やカツオ節の必要はありません。
酒蒸し、ボンゴレ、スープ…ううーん、想像するだけでヨダレが出そうです。
3月のベジ楽ではアサリと三つ葉のパスタを作ります。
3月26日(火)10:30はまだ空きがあります! ぜひ美味しいふっくらアサリを調理しにいらしてくださいね。