日本で唯一の「ゆるベジらく膳料理教室」【ベジ楽】の林佳代子です。
福岡・姪の浜で今日も「ゆるベジらく膳料理」を楽しんでいます。
今日のテーマは「イカ」です。

なぜイカか?
わたしが暮らす福岡市から車で1時間ほどの場所に(わたしの運転ではもう少しかかります)唐津市呼子町があります。
呼子町はイカが美味しい町として知られています。
「イカの活き造り」が有名です。お土産にするなら、「いかしゅうまい」が人気かも。いかしゅうまいに関して言えば、福岡空港でもお土産として販売されているので、ご存知の方も多いかもしれません。
わたしも帰省の際にお土産に購入することが多いです。喜んでいただけるので、何度かリピートしています。
連休も基本的に変わらずに過ごしていますが、ポコッと空いた日があったので、呼子まで「イカ目的」で出かけました。
というわけで、せっかくなのでイカのお話を書きます。
■イカは魚ですか?
哺乳類、爬虫類…生物をその生態からいくつかに分類しますが、海の生き物の代表格は「魚類」です。
では、イカが魚類かというと、そうではありません。イカは「軟体動物」として分類されます。魚類は脊柱がありますが(いわゆる背骨)、イカにはありません。貝などと同様に分類されます。
イカをさばいたときに中央部分にコウイカの場合は平たく硬い板状のものが、ヤリイカの場合は透明の棒状のものが入っています。「骨?」と思われる方もいるかもしれません。
確かに「骨」と称されることが多いのですが、実はこれは貝殻の「貝」に該当する部分。厳密にいうと骨ではないので、魚類には分類されることがありません。
なお、この「骨(便宜上ここでもそう呼びます)」は、細いタイプは足の方向へ引っ張るときれいに外せます。コウイカなど大きい骨はさばきながら外すといいですよ。
■イカにも旬がありますか?
イカには旬があります。ただ、イカの種類によって旬の時季が変わります。
そこで、種類ごとに旬を考えていきます。
実はイカはとても種類が多く、世界的に見ると約450種類。日本近海の海だけでも約80種ですから、かなりの数があります。
とはいえ、よく食卓でお目にかかるイカといえば
- ホタルイカ…とても小さくて丸ごと食べます。酢味噌和えが有名。3~5月が旬で、これを食べると「春だなあ」と感じさせる食材のひとつです。富山県での捕獲高が群を抜いて高いのですが、東京など関東地方にも流通しています。残念ながら福岡に暮らしていてると、あまりお目にかかる機会がありません。

- ヤリイカ…体全体がシュッと尖っていることから「槍」に例えられるイカ。わたしはヤリイカが好きです。比較的身が薄いのが特徴です。東京に住んでいた時にはあまり身近ではありませんでしが、福岡では食べられる場所(お店)が多く、すっかりファンになりました。1~3月に産卵のため、日本近海に現れます。

- コウイカ…コウイカのコウは「甲」とも書きます。通常イカと聞いて、多くの人がイメージするシュッとしたものとは異なり、ずんぐりむっくりしています。身に厚みがあり、食べ応えがあります。墨が多いので、「スミイカ」と呼ぶことも。旬はヤリイカに似ていて、12~3月です。
- スルメイカ…塩辛の材料やするめの材料として一般的に選ばれている種類。一般的に「イカ」といってイメージされるものです。日本でいちばん食べられているイカのひとつ。塩辛に向いているのは、ワタと呼ばれる内臓がとても美味しいから。ただし、残念ながら鮮度がよい状態でないと塩辛は作れません。

- アオリイカ…コウイカ同様にずんぐりむっくり型のイカです。刺身によし、揚げてよし、焼いてよしの万能選手。加熱しても硬くなりにくく、美味しく食べられます。3~5月にたくさん出回ります。

といったところです。
■ゆるベジらく膳的 イカの栄養①
イカは、薬膳では「平・鹹」に分類されます。「平・甘」に分類される方もいらっしゃいますが、わたしは「平・鹹」で学んだので、そちらで今回は書きますね。
平は身体を温めるわけでも、冷やすわけでもない「中庸」という意味です。いってみれば、冷え性の方でもほてりが気になる方にも優しい食材です。
鹹は、腎に作用する性質があるとされます。腎は水分代謝と関係が深く、身体の成長や老化のリズムを整えるのに深く関係しています。浮腫みやすい方にはとくに腎がスムーズにはたらくように注意を払いましょう。その意味でも、腎にはたらきかける鹹の性質のあるイカは魅力的です。
また、イカは「肝」にも関係が深いと言われています。イカと肝との繋がりは、今から2,000年以上前に書かれた『本草綱目』でも見ることができます。ここではイカは「人に益あり、月経を通す」と記載されています。肝という言葉が出てこない、と首をかしげる方もいらっしゃるかもしれませんが、この「月経を通す」という言葉で肝につながりがあるのだ、と受け取れます。

というのも、肝は「血の臓」とも呼ばれており、血を貯蔵する役割を果たしているからです。肝が健全だと、血液が不足することなくスムーズに身体をめぐります。また、肝は血液の浄化にも力を発揮します。とくに女性の場合、血液が過不足なくスムーズに身体をめぐることはとても大切です。薬膳の世界では、肝が健全でないと月経不順をもたらす、と考えるためです。そこで、先ほどの「人に益あり、月経を通す」にも繋がることがイメージしていただけたのではないでしょうか。
■ゆるベジらく膳的 イカの栄養②
現代栄養学の視点からもイカを考えてみましょう。
イカの栄養成分として注目すべきは、タウリンです。タウリンはアミノ酸の一種で、「タウリン〇mg配合」などと記載された栄養ドリンクをご覧になったことのある方も多いかもしれません。
栄養ドリンクにタウリンが含まれている理由は、おそらく(取材していないのでわたしの推測レベルです)タウリンがもつ「疲労回復」効果を期待してのことだと思われます。
そうなのです、
イカのタウリンは疲労回復があることで知られています。

ほかにも、高血圧やコレステロール値の低下にもよいので、生活習慣病予防にもおすすめです。
ほかにも筋肉づくりに不可欠なタンパク質、高血圧予防が期待できるカリウム、血液サラサラ効果があるとされるDHAが含まれています。知れば知るほど、わたしたちの身体にうれしい食材であることがわかります。
■イカのレシピと調理のコツ
イカについて知識を増やした方の多くが、「食べたーい!」となったと思います。
(わたしも食べたい気分です)
先日、訪れた呼子では一夜干しにされるべく干されたイカを街のいたるところで見かけました。もちろん、購買意欲を刺激され、複数お買い上げ。
こちらのブログを読まれている方で、「イカ食べたーい」と思われた方はぜひ呼子へ行かれてみてくださいね。
さて、イカを調理していて、加熱したイカがくるっと丸まってしまった、という経験のある方も多いのではないでしょうか。
この「くるっ」の原因は、イカの身体の構造にあります。イカの身体は、厳密にいうと4層の皮で覆われています。一番外側の皮、その次の皮は比較的に簡単に取り除くことができます。3層目、4層目となるとなかなか難しいのですが、問題は4層目。4層目の皮がもっとも伸縮性があります。加熱することによってギュッと縮まるので、くるっと丸まってしまうのです。この「くるっ」を防止するには、皮をすべて取り除けばよい、ということになります。とくに4層目は手だと取り除きにくいので、キッチンペーパーなどで抑えながら剥くとうまくいきます。ただ、取り除きにくいので、繊維を断つようにカットして置くことで縮みをある程度防ぐこともできます。

さらに、揚げる場合は注意が必要です。皮を残したままだと、皮と皮の間に水気が残ったまま揚げることになってしまいます。水は高温の揚げ油に触れることでバチッとはねるので、やけどの原因にも。そこで、揚げるときはしっかり皮を取り除いてくださいね。
刺身で楽しみたい場合にも、皮を取り除くことをおすすめします。なぜなら、皮は噛みにくいので口当たりの悪い刺身になてしまうためです。
なお、新鮮なイカは光沢があり、目が澄んでいます。呼子で食べたイカは透きとおっていて、目もツヤツヤでした。もっというと、まだピクピク動いていました。

…まだ生きている(生きようとしている)命を「美味しい」といいながら食べてしまうのですから、人間って(というよりわたし自身が)残酷だなぁ、としみじみ感じました。
だかこそ、「命をいただきます」という言葉が胸に響くのだなあ、とも。
わたしの休日美味しいもの談義はともかくとして、イカはやはり美味しいです。そして、身体にも嬉しい食材です。鮮度のよいイカを見つけたらぜひチャレンジしてみてくださいね。