日本で唯一の「ゆるベジらく膳料理教室」【ベジ楽】の林佳代子です。
福岡・姪の浜で今日も「ゆるベジらく膳料理」を楽しんでいます。
今日のテーマは「しょうゆ」です。
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■しょうゆってそもそもなに?

調味料です!
と、書いてしまうと身もふたもありませんが、調味料です。
日本の伝統的な調味料として、広く使われています。
余談ですが、わたしは1週間から10日ほど日本を離れていて帰国すると、成田空港でしょうゆの香りを感じます。そして、この香りを嗅ぐことで「あ、日本に帰ってきた」と実感します。ほんと、余談です(笑)。
しょうゆの材料は、基本的に大豆、小麦、塩、麹のみ。基本的に、と書いたのは商品によってはアルコールを使用することもありますし、場合によっては砂糖が加わることも!
後ほど書きますが、しょうゆはかなり地域性のある調味料なので、材料もいろいろ、というのが実情です。
ただ、個人的には(あくまでも、わたし自身の意見ですよ)材料は最小限でよし、と考えているので大豆、小麦、塩、麹でじゅうぶんかな、と思って選んでいます。
しょうゆ麹と呼ばれる菌(当然ですが、身体によい菌です。ばい菌ではありません)が、材料にじーっくりはたらきかけて生まれます。この間、6~12か月。この醸造期間は商品によって異なりますが、しっかり時間をかけて生まれたしょうゆは美味しいです。また、値段もそれなりにします。といっても、しょうゆなので何万円もするものではありません。
当然ですが、良品ほど(材料にこだわっていたり、じっくり時間をかけて造っているものだったり、こだわりは様々ですが、要するに作り手がこだわって造りだしたもの)価格はあがります。これはしょうゆに限ったことではなく、どの調味料も同じです。目安としてわたしが愛用しているしょうゆを紹介すると、国産丸大豆をはじめ、国産の材料を使用して樽で長期間熟成させたもの…下世話なようですが価格を書くと900mlで約700円です。すっきりした味と香りが特徴で、いろいろな食材との相性がよいのでもう何年も愛用しています。
材料を見て買ったことがない、価格をあまり意識したことがない、という方はぜひしょうゆ売り場をチェックしてみてくださいね。
■しょうゆは家庭で造れますか?

手づくり調味料として一般的なものは味噌ですが、しょうゆも作れないわけではありません。実際、わたしは家庭でしょうゆを作っている方を取材して、お手伝いレベルですがやらせていただいたことがあります。
味噌よりも手間がかかる、というのが実感です。
その理由は、しょうゆ麹が毎日のように混ぜて空気を入れる必要があるから。
取材時に教えていただいたのですが、昔は厠(いわゆるトイレ)の近くに樽を置いておき、厠を使うたびにかき混ぜていたのだとか。うん、確かにそれなら忘れないよなぁ、と感心したことを今もよく覚えています。
もろみを作るまではできるのですが、しょうゆは「搾る」という行為がなかなか大変です。液体とそれ以外とに分ける作業を搾るといいます。わたしが取材した農家さんでは、「舟」を呼ばれる道具を使って圧搾していました。量が増えるほど、道具を使わないと搾り切れません。
実は、しょうゆを作れないかどうかを調べたことがあります。
そして、「手作りしょうゆキット」が販売されていることを知りました。なんだかワクワクものですね。近々挑戦してみたいと思います。お子さんがいらっしゃる方は、夏休みの自由研究にもいいかもしれませんね。
■しょうゆの種類によって塩分が違う?

「濃い口しょうゆ」と「薄口しょうゆ」という名称を聞いたことがあるかもしれません。あまり聞かないなぁと思われる方はぜひスーパー等のしょうゆ売り場を除いてみてください。どちらも陳列されていると思います。
名前の響きから、「薄口しょうゆのほうが薄いんでしょう? だから塩が多いのは濃い口しょうゆよね」と思われた方はいませんか?
そう考えるのはごく自然なことですが(漢字から推測してもそうですね)、実は違います。
薄口しょうゆのほうが、塩気が強いのです。
濃い口しょうゆは塩分量は約15パーセント、一方、薄口しょうゆの塩分量は約16パーセントです。では、なにが薄いのか、というと、しょうゆの色と香りです。
野菜や白身の魚を煮るときなど、しょうゆ特有の色や香りをつけずに仕上げたい場合によく使われます。薄口しょうゆは、兵庫県で生まれたと言われています。皮膚感覚でしかありませんが、郷土料理を作る際に薄口しょうゆを使っていたのは主に西日本地域だったので、無関係ではないのかもしれません。
ただし、一般的にレシピのなかで「しょうゆ」と表記されているものは、濃い口しょうゆを指します。購入する際には、最初の1本はぜひとも濃い口しょうゆをおすすめします。「いろいろな料理に挑戦しています」「レシピを見ながら作っています」というタイプの方ならなおのこと、レシピによく登場するものを選んでください。
■地域によって異なるしょうゆの味

しょうゆは、調味料のなかでも地域性が色濃く反映されるものです。
西日本のしょうゆは、「さしみじょうゆ」がとても多いです。福岡も同じ。地元では普通に「しょうゆ」と呼ばれています。
この「さしみじょうゆ」がとても甘いのです。しょうゆなのに、です。
九州のしょうゆの甘さが生まれた背景には諸説あるようですが、わたしが教えて頂いたのは九州と長崎、そして出島の関係です。
日本が鎖国をしていたころ、砂糖は今のように一般的ではありませんでした。限られた量しか流通しておらず、一部の人だけが楽しめる贅沢品だったのです。砂糖が日本に入ってくるときの玄関となっていたのが、長崎県の出島です。歴史の教科書を思い出しませんか? そうです、あの出島です。
出入り口になっていたことから、砂糖は長崎をはじめとする九州の一部では日本の他の地域に比べて砂糖が入手しやすかったのです。
手に入った貴重な砂糖を使うことは、最大のおもてなしになる。
当時の人々はそう考えて、特別な日の食事(ハレの日の食事)には砂糖を使って歓待の気持ちを表しました。
実際、長崎県に伝わる郷土料理には、砂糖をたっぷり使ったものが多いのです。初めて体験したときには、ひっくり返るほどびっくりしたのですが(失礼ですね、今思えば)、歴史的背景を伺い、「なるほどなぁ」と納得しました。実際、長崎の方と話しているとサービス精神が旺盛な方が多く、感激することも多々あります。
なお、出島から入った砂糖をはじめとする舶来品は、長崎街道をとおって大阪や江戸へと運ばれました。この長崎街道を「シュガーロード」とも呼びます。実際、このシュガーロードに沿って今も食べ継がれているお菓子がとてもたくさん残っています。まさに砂糖文化が伝来した道なのですね。

シュガーロードがあるほどの九州です。しょうゆが甘いのも、「特別感」や「美味しさ」の観点から言えばごく自然なことかもしれません。
さらに、もうひとつ。
九州で食べられる魚が甘みのあるしょうゆと相性が良かったため、という説もあります。これも納得。
わたしが福岡に暮らして「へえ」と思ったことのひとつに、出回っている魚介類の違いがあります。関東育ちのわたしには身近なものがなかったり、反対にあまり食べる機会のなかったものがたくさん出回っていたりと、魚介類もずいぶん様子が異なります。
地元の魚との相性によって甘めの魚が出回るようになったというのも、これまた納得です。
どちらも教えて頂いたことで、正誤のほどは正直わからないのですが(あくまでも説ですから)、なんとも納得のいく話です。
しょうゆの種類でいうなら、九州の刺身しょうゆに似たところで、「たまりしょうゆ(たまりじょうゆ)」があります。東海エリアでよく食べられるしょうゆで、材料は大豆と麹のみ。
トロリとしていて、かなり甘みが強いしょうゆです。
皆さんのお住まいの地域ではどのようなしょうゆが食べ継がれているでしょうか。
地元のしょうゆを今一度見直してみるのもいいかもしれませんね。
ちなみに。
わたしは福岡に住んでしますが、 結局のところ、 スッキリとした味のしょうゆを好んで使っています。やはり食べ慣れたものへ回帰するのでしょう。
■ゆるベジらく膳料理的 しょうゆの栄養
しょうゆを薬膳的視点から分類すると「寒・鹹」になります。
寒は身体を冷やす作用があることを意味します。冷やす=身体によくない、ということではなく、余分な熱を取り除くなどプラスの面も備えています。
鹹は、味の性質のひとつ。あくまでも「性質」であって、「味そのもの」ではありません。
鹹の性質には、便秘の症状をやわらげたり、かたくなっているものを柔らかくすたりする力があるとされます。この「かたくなっているもの」として、しこりが該当します。
さらに、腎を健全な状態にするのに一役買います。腎は、身体の水の流れを司っています。腎が正常に機能しないと、余分な水が体外に排出されず浮腫みに悩まされることも。

薬膳では、リンパもすべて「水」として考えます。リンパが滞ると…これもまた、浮腫みの原因にも。
さらに、胃腸のはたらきを助けて食欲を刺激します。しょうゆの香ばしい香りは、確かに食欲を刺激しますね。解毒作用もあるので、刺身に使うことは理にかなっています。
■ゆるベジらく膳料理的 しょうゆの保存 冷蔵がおすすめです
しょうゆの保存についても、触れておきます。
皆さんは、しょうゆをどのように保存されていますか?
しょうゆは常温? 冷蔵?
しょうゆは開栓した瞬間から酸化を始めます。酸化したしょうゆは色がどんどん濃くなっていきます。これを「増色」と呼びます。増色したしょうゆは香りも風味も低下します。さらに、空気に触れる以外にも増色を促すものがあります。それが光です。光を防ぐ意味でも、缶入りがもっともおすすめです。缶の次はビン、そしてプラスチックと続きます。
さらに増色は、温度が低いと進みにくいという特徴があります。
温度が低く、暗いところ。
そうです、冷蔵庫です。

ぜひ冷蔵庫で保管してください。
わたしたちの食文化に欠かせない調味料だからこそ、納得のいくものを選んで最後の1滴まで美味しくいただきましょう。