日本で唯一の「ゆるベジらく膳料理教室」【ベジ楽】の林佳代子です。
福岡・姪の浜で今日も「ゆるベジらく膳料理」を楽しんでいます。
今日のテーマは「間引き野菜」と「トウモロコシ」です。

Contents
■間引いた野菜はどれも美味しい
さて、本日のテーマのひとつ「間引き野菜」ですが、もっというと「赤ちゃんのトウモロコシ」について、です。
ベビーコーンという名称のほうが、皆さんにとって身近かもしれません。
小さいトウモロコシです。
間引いたトウモロコシです。
間引き…トウモロコシに限らず、野菜全般にあるのが「間引き菜」です。
そもそも間引きって何でしょう?
野菜の多くが、種を1粒だけ蒔くということはありません。農家さんによっても違いますが、大豆を例にあげると4粒程度一か所に蒔くことが多いです。
全部が順調に生長すればよいのですが、そう簡単ではありません。発芽までが難しい野菜もあれば、発芽はするけれども生長の過程で虫や病気に弱い野菜もあります。それは野菜によりけりですが、収穫できるまで生き残るものがないと困るわけです。
順調に生長すると、今度は複数の株が密集した状態になります。今度は、この「密集」が問題になります。
実は、野菜ごとにふさわしい「株間」があります。隣の株との間にどのくらいの隙間があれば生育しやすいか、という目安です。この目安となる株間に比べて密集していれば、当然ですが葉を横に広げたり、根を大きくはったりということが難しくなります。ひょろりとした野菜が育ちます。これは美味しくありません。

そこで、必要なのが株間を適宜とるために余分な株を適宜取り除くこと=間引きです。
トウモロコシの場合、1つの株に3~4本の実がなります。それを2本残して(農家さんによっては1本のこともあります)、3本目からは摘果してしまうのです。これが間引きです。
間引きされたものは、野菜によって段階が違いますが、おおむね「野菜として完全に大きくなる前」の状態です。だから、ここでは「赤ちゃん」と表現しました。
赤ちゃんと呼びたくなるほど、どの野菜も間引き菜はとても柔らかくエグミや苦味がありません。
■ベビーコーンを食べる
まだ柔らかいベビーコーンですが、わたしはさっと蒸し茹でにするのが好きです。

ひげ根もまだまだ柔らかいので、これもしっかり食べます。ひげ根については刺身のツマ感覚でしょうゆで食べると美味しいです。わたしはドレッシングやレモンを搾って塩をふったりすることもあります(そのあたりは気分です)。
野菜は基本的にホウレンソウやキャベツのように土の上にできるものはお湯から茹でます。反対に、ゴボウや人参のように土の下にできるものは水から茹でます。
この法則には一部だけ例外があります。そのひとつが、このトウモロコシです。
トウモロコシは法則に沿っていうなら、お湯から茹でる野菜ですが、例外的に水から茹でます。ベビーコーンであっても同じです。
では、トウモロコシの茹で方についてちょっと触れておきます。
■トウモロコシの茹で方
トウモロコシが地面の上にできるのに、なぜ水から茹でるか、というとでんぷんを多く含むからです。

でんぷんはじっくり加熱すると甘みが引き出されます。
水から茹でる分、お湯に投入するよりも時間がかかります。そのぶん、甘みを引き出せます。
さらに、水はたっぷり入れるひつようはありません。わたしの場合、なべ底から2~3cmほどの水を入れます。ただし、蓋をしっかり閉めます。
わたしの場合はル・○ルーゼで密閉した状態で加熱することが多いです。鍋の中を蒸気で満たして蒸し茹でにします。
沸騰したら、そのまま3分ほど加熱。そして火を止めて鍋に入れたまま冷まします。
これが美味しい。
簡単ですが、とても美味しいのです。
それから、トウモロコシの芯は「天然のだしの素」です。
旨味成分が含まれていて、しみじみ優しいだしが出ます。わたしはトウモロコシの炊き込みご飯を作る際に一緒に炊いてだしをとることもします。
本当に美味しいので、ぜひぜひ試してみてくださいね。
■ゆるベジらく膳料理的 トウモロコシの栄養①
薬膳的視点からトウモロコシの栄養を考えてみましょう。

薬膳では、ベビーコーンもトウモロコシも同じように考えて分類します。
トウモロコシは「平・甘」。
甘の性質を持った野菜は、胃腸をのはたらきを助けてくれます。さらに消化吸収を促してくれるとあって、イイコト尽くめです。
もっとも注目すべきは、高い利尿作用です。身体の中の水のめぐりをよくしてくれることから、利尿作用が高いとされています。余分な水を身体の外へスムーズに排出するのに一役買う野菜です。
とくにトウモロコシが旬を迎える6月から8月ごろは、湿度が高くムシムシした日が多く、自然と身体に水分がたまりがちです。そのようなときに、貯まってしまった水を排出してくれるトウモロコシが美味しくなるとは、やはり自然界の偉大さを感じずにはいられませんね。
先ほどひげ根も美味しいと書きましたが、実は利尿作用がもっとも高いのがひげ根なのです。とくに中国ではひげ根を「玉米髭(ぎょくべいじゅ)」と呼んで生薬として使われています。あるいは、「南蛮毛(なんばんもう)」と呼ばれることもあります。
この玉米髭は乾燥させて、煎じてお茶を作ることが多いです。「とうもろこし茶」という名称で販売されているお茶はほぼひげ根茶だと思って構いません。生薬のお茶と聞くと、苦くてまずいのでは? と考える方もいるかもしれません。確かになかにはそういうお茶もないわけではありません。しかし、トウモロコシ茶にかんしていえばほんのり甘く、とても美味です。香りも優しくて、年齢を問わずに飲める点もおすすめです。
■ゆるベジらく膳料理的 トウモロコシの栄養②
現代栄養学の観点からも、トウモロコシの栄養をチェックしてみましょう。
トウモロコシを主食にしている地域があることからもわかるように、糖質がとても多く含まれています。糖質は素早くエネルギーに変わるので、朝食のように「今、補給したい!」というような場面にぴったりです。

トウモロコシを原料にしたコーンフレークやコーンブレッドは理にかなっています。日本人の場合は、米を主食にしています。米も糖質を多く含むので、理にかなっていることなのです。
さて、糖質以外の注目すべき栄養素は、食物繊維です。
トウモロコシは食物繊維がとても多く、これによって便秘解消効果を期待できます。ただ、消化があまりよくないことにも通じるので、小さいお子さんやお年を召した方は食べすぎないよう注意が必要です。
■トウモロコシの選び方
せっかく食べるのなら、美味しいトウモロコシを選びましょう。

そこで、美味しいトウモロコシの見分け方についても触れておきます。
- 朝取りのものを選ぶ。
- 収穫されて時間が経っていないものを選ぶ。
- 葉がしっかりついているものを選ぶ。
- ひげ根がたっぷりついているものを選ぶ。
- 手にしたときに重いものを選ぶ。
ひとつめの「朝採り」がおすすめの理由は、糖にあります。
トウモロコシの甘み(糖)は昼の間に葉に蓄えられ、夜間実へと送られます。そして、昼間は実に蓄えられた糖を使って生長していきます。つまり、朝収穫したトウモロコシがもっとも実に糖を蓄えた状態なのです。だから、「朝採り」と表記されたものがおすすめです。
ふたつめの「時間が経っていないもの」についてですが、トウモロコシが鮮度の落ちやすい野菜だからです。収穫されてから、時間がたつほど味がおちます。さらにいうと、甘みも落ちます。購入したらすぐに茹でるところまで済ませてしまいましょう。
食べきれないトウモロコシに関しては、茹でた実をバラバラにはずして(包丁でこそげ取るといいですよ)冷凍保存しましょう。
3つめの「葉つきのものを選ぶ」ですが、これも鮮度に関係があります。
葉はいってみればトウモロコシの洋服のようなもの。乾燥を防ぎ、鮮度が落ちるのを抑えてくれています。だから、スーパー等の売り場ですでに葉が取り除かれているものは避けましょう。自分が茹でる直前に葉を取り除いてくださいね。
4つめの「ひげ根」についてです。
ひげ根は多ければ多いほど実がたっぷりつまっています。というのも、ひげ根の1本1本はすべてトウモロコシの実のひと粒ひと粒に繋がっているからです。「ひげ根が多い=実が多い」となります。
また、ひげ根が適度に湿り気があるといいですね。収穫後、トウモロコシの水分はひげ根から抜けていきます。ひげ根がカッサカサのものは、収穫後時間が経っていると判断できるので避けてください。
5つめの「重いもの」についてですが、これも水分と関係があります。トウモロコシに限らず、野菜は収穫直後がもっとも瑞々しい状態です。その後、時間が経つほど水が抜けていきます。逆にいえば野菜に含まれる水分量が多いほど、鮮度がよいと考えられます。手にしたときに適度な重量感があるものがおすすめです。
間引き菜からトウモロコシの話へと幅広く書きましたが、参考にしていただければ嬉しいです。これからますます美味しくなるトウモロコシを上手に選んで召し上がってくださいね。