日本で唯一の「ゆるベジらく膳料理教室」【ベジ楽】の林佳代子です。
福岡・姪の浜で今日も「ゆるベジらく膳料理」を楽しんでいます。
今日のテーマは「タマネギ」と「新タマネギ」です。
Contents
■新タマネギとタマネギはどう違う?
「新タマネギ」と書かれたポップを店頭でよく目にするようになりました。

わたしはこの「新タマネギ」という言葉にめちゃくちゃ弱いのです(自慢じゃないけれど)。見た瞬間にテンションがあがります。
もともとタマネギは食べ方がいろいろある野菜ということもあり、大好きです。そのままも美味しいけれど、どんな野菜と組み合わせても相性がよく味がまとまるから好きです。
周年で手に入りやすいというのも好きな理由です。
それでも、新タマネギとなると話は別。かなり季節が限られます。
新タマネギは、4月から5月にかけてがまさに旬! 今だけの味です。
この「限定感」にわたしはとても弱いのです。
「今だけ」「季節限定」「限定〇食」などなど。“限定”という言葉にとにかく弱いのです。
というわけで、タマネギと新タマネギを違いから考えていきましょう。
◇タマネギと新タマネギは時間が違います
もっとも大きな違いが、時間です。
収穫されてからの時間が短いか、長いかの違いです。
短いものが、新タマネギ。反対に長いものが、タマネギです。
◇タマネギと新タマネギは水分量が違います
時間と無関係ではないのですが、収穫後時間が経てば経つほど水分が抜けます。

水分が抜けることによって腐りにくくなり、長く食べられるのです。通常タマネギは、乾燥させてから出荷します。それによって長く日持ちするようになるのです。
しかし、収穫仕立ての新タマネギは収穫後すぐに出荷されます。これが新タマネギです。乾燥期間がないぶん、水分が多く瑞々しいのです。
■今更聞けないタマネギのこと
◇タマネギの歴史
タマネギはかなり古くから食べられていた野菜です。とくにエジプトやヨーロッパといった地中海沿岸地域では、紀元前から栽培されていたという記録が残されています。
もっとも日本にタマネギが本格的に入ってきたのはもっと後のこと。
本格的に栽培されるようになったのは、明治時代になってからだと言われています。食の西洋化と微妙にリンクしています。
今では、通年出回っていることもあって、とてもポピュラーな野菜のひとつとして認知されています。
実際、ベジ楽のレッスンに参加される方に「常備している野菜」をうかがうことがあるのですが、かなりの頻度でタマネギと答えられる方がいらっしゃいます。ちなみに、タマネギ以外の常備野菜として名前をよく効くのが、ジャガイモと人参です。…カレーが食べたくなりますね。
◇タマネギは根? 茎? 葉?
タマネギのコロンとした部分は根っこでしょうか? それとも茎でしょうか? 葉っぱ?

大抵の方が「根っこ」と答えるのですが実は、葉っぱです。
正確には、「鱗茎(りんけい)」といいます。これは、茎の根元が肥大化したものです。茎が膨らんで葉になったものとして考えるので、厳密に区分すると葉にあたります。
らっきょうやニンニクも同様で、これらも茎が肥大化したもの、としてとらえます。
…もっとも茎だろうが、根だろうが、美味しくいただければ結果的に同じなのですけれども。それでも、知っていると好奇心が満たされますね。
◇タマネギを切ると涙が出る?
タマネギは包丁等で切られることで、断面の細胞が破壊されます。細胞が壊されることで、硫黄化合物と硫化アリルが発生します。このふたつの成分は刺激臭と辛味成分があります。

ふたつの成分のうち、硫化アリルが目や鼻を刺激します。刺激されることで、涙が出てしまうのですね。
涙を防ぐには、硫化アリルによる刺激を防げばよいので、タマネギを冷やしておくと有効です。あとは…
よく切れる包丁で手早く切る!
という方法も有効だとわたしは感じています。包丁が切れないとどうも刺激が強いです。適宜包丁を研いでおいてくださいね。
■新タマネギの食べ方
タマネギはカレーでもシチューでもお馴染みですし、肉じゃがのような和食でもよく食べられます。ただ、新タマネギとなると、どうやって食べようか迷う方も少なくありません。そこで、ここでは新タマネギの食べ方についてお伝えします。
◇新タマネギは生食がおすすめ
4月から5月にかけて出回る新タマネギは、瑞々しく甘みが強いのが特徴です。
ぜひとも生食で食べてください。

ただ、どうしても辛味が気になるという方もいるでしょう。その場合は、切った後15分から20分ほど放置しておくと辛味が落ち着きます。さらに、酢と合わせることで辛味が気にならなくなります。
水にさらすという方法もないわけではありません。
ただ、わたしはこの方法をあまりおすすめしていません。なぜかというと、水にさらすことでタマネギの特徴である辛み成分が水に抜けてしまうから。実は辛み成分は水溶性です。
この後に詳しく説明しますが、タマネギの辛み成分は栄養効果を期待できるので、抑えることはしても食べたい成分でもあります。
だから、「水にさらさずに召し上がってみてくださいね」と、ベジ楽のレッスンではすすめています。
◇新タマネギのおすすめシンプルレシピ⁉
新タマネギはやはり生で食べてほしい野菜です。

簡単なのは、繊維に沿ってスライスして削り節をぱらり。酢醤油(ポン酢でもOK)をたらり。これだけ。これがやみつきレシピです。
ほかにも、ゴマ油でカリカリにしたちりめんじゃこをぱらり。みりんとしょうゆをひと煮して上からジュッ。これだけ。これもまたやみつきレシピです。
「え? これだけですか?」と、言われてしまうのですが、野菜の美味しさを感じるのって実はシンプルなレシピがいいのです。ぜひぜひお試しください!
■ゆるベジらく膳料理的 (新)タマネギの栄養①
ここでは、タマネギを新タマネギとタマネギは、薬膳では同じものとして考えます。そのため、ここで考える「タマネギの薬膳的栄養」については、新タマネギも同じだと考えてください。
タマネギを薬膳で分類すると「温・辛」に分類します。
温は身体を温める、という意味です。薬膳では、身体に対して食べ物がどう働きかけるかを、熱・温・平・涼・寒の5つに分類します。熱がもっとも身体を温めます。反対に寒は身体の余分な熱を取り除き、クールダウンします。熱と温はどちらも温める作用ですが、温はよりマイルドです。さらにいうと、血行をよくする力もあります。血行がよくなることで、冷えを防止するのです。
辛は「辛い」からきている分類です。といっても、味を表現しているよりは、「味の性質」を表現した言葉です。この「辛」を持つ食べ物は、肺や大腸を健全な状態にするようはたらきかけます。肺は皮膚とつながりが深いと薬膳では考えます。健やかな肺は、健やかな皮膚(つまり美肌ですね)づくりに欠かせません。また、肺が健全にうるおっていると風邪をひきにくくなります。
さらに大腸が健全だと消化吸収がよくなり、疲労回復にも直結します。また、便秘の改善にも繋がります。
■ゆるベジらく膳料理的 (新)タマネギの栄養②
現代栄養学の観点からも、タマネギをみてましょう。
「血液サラサラ効果」といった表現をきいたことがあると思います。タマネギには、この血液サラサラ成分が含まれています。
タマネギを切ったときに目や鼻に刺激を与える成分として、硫化アリルについて触れました。この硫化アリルは、ビタミンBの消化吸収を助ける効果があります。これによって新陳代謝が活発になり、血液をサラサラにします。
そう、わたしは辛み成分である硫化アリルを完全に取り除かないためにも、水にさらさずに食べたい、と書いた理由はまさにここにあります。
血液がサラサラになると、動脈硬化や高血圧、脳血栓などを防ぐ効果が期待できます。
■美味しいタマネギの見分け方
どうせ食べるなら、美味しいタマネギを選びましょう。栄養に関しては、タマネギも新タマネギも同じように説明しましたが、選び方に関しては両者で少し異なるので、それぞれ分けて説明します。
◇タマネギ

- しっかり乾燥しているもの
- 茶色の皮がカサカサしているけれど、ツヤがあるもの
- 手にしたときにギュッと詰まった感じがあって、きれいな球形をしているもの
- 適度な重さがあるもの
これが、美味しいタマネギです。
保存はネットなどに入れて冷暗所がベストです。わたしが暮らす福岡は、夏場はとくに気温がものすごく高くなるので、野菜室を利用することもあります。
◇新タマネギ

- 皮につやがあって、全体に透明感がるもの
- きれいな扁平型をしていて、表面に傷がないもの
- 手にしたときに適度な重さを感じるもの
これが、美味しい新タマネギです。
新タマネギは水分が多く、腐敗しやすい一面もあります。そこで、おすすめなのがビニール袋等に入れて冷蔵庫の野菜室に置くこと。これで、腐ることもなく、水気をキープしながら保存できます。
1年中出回っている野菜なのに、今だけ瑞々しい状態で食べられるのが新タマネギです。期間が短い分、希少価値が高いです。ぜひ、「今だけの味」をシンプルに味わってください。
期間限定の魅力をしみじみ感じられるのって、実は最高に贅沢なことかもしれませんよ。