日本で唯一の「ゆるベジらく膳料理教室」【ベジ楽】の林佳代子です。
福岡・姪の浜で今日も「ゆるベジらく膳料理」を楽しんでいます。
今日のテーマは「キュウリ」です。

Contents
■キュウリはどんな野菜ですか?
キュウリは古くから食べられてきた野菜のひとつです。
栽培の歴史をひも解くと、3,000年以上前までさかのぼることができます。もともとはヒマラヤの山地が原産で、日本には中国や朝鮮半島を経由して伝えられました。
日本に入ってきたのは、6世紀だと言われています。6世紀の日本はどんな時代だったかというと…当時活躍した有名な人物としてあげられるのが厩戸皇子。そうです、聖徳太子として知られる人物です。
厩戸皇子が推古天皇の摂政になったのが、593年ですから6世紀の終わり。つまり、キュウリの歴史は本当に古いことがわかります。
ただ、今のように栽培が盛んになったのは、もっとずっと後のこと。江戸時代になってからだと記録されています。さらに、現代のように「サラダ」の材料として年中食べられるようになったのは戦後のことです。
キュウリを漢字で書くと「胡瓜」。その語源は、「黄瓜」だと言われています。
つまり、黄色の瓜です。「キュウリは緑色でしょう?」と心の中でツッコミを入れた方、大正解です。
そう、皆さんが野菜として食べているのは、緑色のものです。
これはまだ熟していない状態(これを未熟といいます)。これが熟すと黄色に変化します。わたしたちが食べているのは実として熟す前のものなのです。
実際、キュウリが収穫期を逃してそのまま畑に残されていると、とても太くなり黄色っぽく変化していきます。と、同時にタネがクッキリハッキリしてきます。
これはこれで美味しいのですが、皆さんがイメージするキュウリとはちょっと違うかもしれませんね。
■ゆるベジらく膳料理的 キュウリの栄養①
レッスンにご参加くださっている方に「キュウリの栄養は?」と聞いても、皆さん一様に「栄養ってあるんですか?」と逆に聞き返されます。
かといって、皆さんがキュウリを食べていないというわけではありません。皆さん、召し上がっています。ただ、ホウレンソウやトマトのように栄養を期待されている方は少ないようです。
うーん…確かに栄養について語る際に登場する野菜ではないかもしれませんね。カボチャや人参のようなパワフルさは確かにありません。味もどちらかというと淡泊です。
現代栄養学でいうと、キュウリの95%は水です。事実、キュウリをスパッと切って放置しておくとものの数分で断面にぷくぷくと水滴が浮かび上がります。そのくらいみずみずしい野菜です。
暑い季節にのどの渇きを癒してくれる野菜でもあります。
栄養的な話をすると、ビタミンCとカリウムが多いです。
ビタミンCはアスコルビン酸とも呼ばれる成分で、コラーゲンの生成に欠かせない栄養素です。コラーゲンといえば、お肌プルプルに必要な栄養素ですね。
美肌効果を期待できる点でも注目を浴びる成分ですが、実際のところビタミンCが不足すると血管を健康的な状態(丈夫な状態)にキープできません。その結果、血管内に血液をとどめておけなくなり、出血してしまいます。
これがひどくなると、壊血病になります。壊血病とは、かつて大航海時代の船員たちが悩まされた病気です。当時は食品の保存技術がとぼしく、新鮮な野菜や果物が食べられずにビタミンC不足になったからです。なお、その後船員たちの壊血病は、ジャガイモという救世主によって劇的に改善されました。
ただ、キュウリにはビタミンC酸化酵素が含まれています。そのため、キュウリを切って他の野菜と混ぜてしまうと、ビタミンCが酸化してしまいます。それを防ぐために酵素のはたらきを鈍らせなくてはいけません。
このビタミンC酸化酵素は、酸度を下げると動きが鈍くなります。そこで、酢を一緒に調理することをおすすめします。
と、ここまで読んでピンッときた方もいらっしゃるかもしれません。キュウリの酢の物はとても理にかなっているのですよ。ただ、キュウリとよく組み合わせるワカメは、キュウリと同じように身体を冷やしてしまいます。そのため、千切りにしたショウガをあしらうなど、ひと工夫してみてください。
もうひとつの栄養素であるカリウムには、利尿作用があることがわかっています。身体の余分な水分を尿として排出できれば、浮腫み防止に繋がります。
■ゆるベジらく膳料理的 キュウリの栄養②
薬膳的視点からキュウリを見てみましょう。
キュウリは薬膳で分類すると「甘・寒」に分類されます。
甘は胃腸を健全な状態にしてくれる役割をはたします。ほかには緊張を緩和して、筋肉や精神をゆるめてくれるとされます。体力的に弱っているような場合にぴったりですね。
寒は身体を冷やす力があることを意味します。夏の暑さで身体に熱がこもってしまうような場合、キュウリのクールダウン効果が嬉しくはたらきます。ただ、終日冷房の効いた室内で過ごしていて、暑さよりも冷えが気になる方はかえって身体の熱が奪われてしまうので、食べすぎには注意しましょう。
食べる際にも、ニンニクやショウガと組み合わせるなど工夫をすることを心掛けてみてください。
なお、キュウリは古い中国の書物『本草綱目』にも登場します。「熱を冷まし、渇きを止め、水を利する」と書かれていることからもわかるように、クールダウンや水のめぐりをよくする効果があるのです。先人たちの経験による深い洞察と理解に感動さえ覚えますね。
■キュウリの食べ方はサラダだけ?
キュウリといえばサラダの材料として生で食べる、という方は結構いらっしゃいます。
キュウリ=生食
うーん、確かに美味しいです。でも、「生だけ」と限定してしまうのはちょっともったいないですよ。
黄瓜と書くくらいなので、キュウリを「瓜」として考えるとわかりやすいと思います。瓜は加熱して食べることもありますよね。もちろん、生でも美味しいのですけれども。
そこで、加熱処理をして食べることをおすすめします。
ニンニクと共に胡麻油でさっと炒めてしょうゆをタラリ。これだけでとても美味しいキュウリ炒めができあがります。そこにもう少しパワフルさを出したかったら、豚肉をプラスしてもいいですよ。さらにパンチを効かせたかったら、鷹の爪をプラス。もしくはキムチを加えても美味しいです。最後に炒り胡麻をパラパラッとふっても美味しいです。
ニンニクも鷹の爪も冷え対策に効果的な野菜なので、冷え性の方にもおすすめです。もっとも「加熱する」というだけで、生食よりも冷え対策になるので(これはキュウリに限ったことではありません)、その意味でもおすすめです。
キュウリは味が淡泊な分、いろいろなアレンジができます。今ざっと書いただけで、数種類の料理にアレンジできることがおわかりだと思います。ぜひお試しください。
■美味しいキュウリの選び方
キュウリにはいろいろな品種があります。
古くから食べられてきただけあって、昔ながらの青い味のするものや、比較的新しくクセのないタイプなど実にさまざまな品種があります。この品種がよい、これは悪い、ということはありません。
むしろ、皮の食感や香り、みずみずしさなど品種によって異なるので、自分の好みを探すのも楽しいですよ。おすすめです!
美味しいキュウリは、表面のイボがハッキリしています。
古いものはイボがとれてしまっていたり、表目のはりが失われてしまったりしています。色艶がよく、イボイボしているものを選びましょう。
ただし、最近はイボが最初からない表面がツルンとした品種も出回っています。「フリーダム」と呼ばれる品種が代表的です。
一方、イボイボしたキュウリでよく見かけるのは「四葉キュウリ」です。
キュウリは古くから食べられてきただけあって、地域性のある野菜です。各地にユニークな品種が残っています。
有名なところでは、「加賀太胡瓜(かがぶときゅうり)」。金沢の伝統野菜のひとつです。名前のとおり、とても太くて重さが600gを超えます。
沖縄で伝統的に食べられているのが「赤毛瓜(アカモーウイ)」。かつては琉球王朝で食べられていました。総重量が1kgを超えるジャンボ胡瓜で、色は赤茶色。皮をむくと真っ白ですが、色が緑色でないため「え?キュウリ??」と驚く姿をしています。インパクト抜群ですね。
「相模半白(さがみはんじろ)」。先のふたつに比べると比較的新しい品種ですが、それでも昭和初期のころに改良されて出回った品種です。名前のとおり、半分が白く半分が緑色です。どちらかというと漬物向きです。
身近なキュウリも改めて見てみると、とても興味深く感じていただけるのではないでしょうか。野菜オタクとしては、身近な野菜ほど隠れたストーリーを感じるとウキウキしてしまいます。皆さんにもこのウキウキがつたわったら嬉しいです。
さて、ベジ楽では毎週火曜日に野菜にまつわるオタクトークを配信しています。お友達登録をお願いいたします。2019年7月現在、お友達登録をしてくださった方に「ミニ体質診断チェックシート」と、その結果を無料でプレゼントしています。ぜひこの機会にご登録くださいませ。
よろしくお願いいたします。

また、ベジ楽の7月のレッスンでもキュウリは登場予定です。キュウリや他の夏野菜について知りたい方はぜひはじめてレッスンにご参加ください。お待ちしています。