日本で唯一の「ゆるベジらく膳料理教室」【ベジ楽】の林佳代子です。
福岡・姪の浜で今日も「ゆるベジらく膳料理」を楽しんでいます。
今日のテーマは「アブラ」です。
油もしくは脂。
まとめて油脂ともいいます。
レッスンに参加してくださった方からの質問に答えるべく、持ち前のオタク精神を発揮してみました。
ちょっと長めの内容ですが、おつきあいください。
Contents
■油は健康の敵ですか?
ベジ楽のレッスン中に限らず、アチコチで「油は控えたほうがいいですか?」という質問や「油は身体によくない」という声を聞きます。
皆さんにも心当たりはありませんか?
わたしもかつて、「油は控えて方がいいんだろうか」と考えていたひとりです。
「かつて」と書くと、「今はちがうんですか?」と聞かれそうですね。うん、わたしが反対の立場だったらツッコミを入れるところです。
そうですね、今は「とりかたを考えている」といったほうが正しいです。
やみくもに控えることはしません。だって美味しいし。
かといって、なんでもかんでも食べると考えているわけでもありません。だって怖いし。
油とひと口にいっても、いろいろな種類があります。
商品として販売されている油もあれば、食品に含まれている油もあります。
なにをどう考えて、どう摂っていくのか。
今日は、ベジ楽流(あくまで林流)の「油とのつきあい方」について考えてみます。
■油と脂はどうちがうの?
油について考える際に、わたしがキーワードになると思うのは「油」と「脂」です。
この違いを知っておくことは、健康への第一歩だと考えています。
ざっくり分けると、
- 油…液体。水に溶けにくい。
- 脂…常温では固体。加熱すると液体に変化する。
油は菜種やオリーブオイルのようにサラサラとした液体状のタイプです。
脂は、肉の脂身というとわかりやすいでしょうか。肉を焼くと脂が熱で溶けてじわ~っとにじみますよね。あれです! あれが脂です。
気をつけたいのは「脂」のほう。
冷えると個体になる脂は、やはり食べすぎは危険です。
なぜか?
簡単にいってしまえば、血液ドロドロの原因になるからです。人は血管から老化する、と話す医師がいるように、血管が健康であることはとても大切です。
脂のほうは、血管の老化を手助けしてしまうのです。
■油も摂らないほうがいい?
脂に気をつけるといっても、やっぱり油も気になる。
どっちも摂らないほうがよいのでは? と、思われるかもしれません。
ちょっと待ってください。
油(脂質と呼びます)は五大栄養素のひとつです。
五大栄養素とは、炭水化物・脂質・タンパク質・ビタミン・ミネラルの5つ。
このなかの脂質に油(脂)は含まれます。体内でおもにエネルギーとして活躍することもあり、わたしたち人間にとって必要な栄養素に分類されます。
もちろん、脂質だけ摂ればよい、という意味ではありません。そこは誤解をしないでくださいね。
エネルギー補充の意味でも、やはり油(脂)は必要です。
ただし、油(脂)過多の場合、肥満の原因になります。肥満以上に怖いのが、肥満が引き起こす生活習慣病などのリスクが高くなること。
だからこそ、詳しく知って適量を摂り入れたいものです。
■油と脂、どんな種類がありますか?
油(脂)といってもいろいろあります。と、先ほど書きました。
では、具体的にどのような油があるのかを考えていきます。
分類の仕方や捉え方はさまざまです。
一般的な考え方をまとめると、次の表のようになります。
飽和脂肪酸 | ||
不飽和脂肪酸 | 一価不飽和脂肪酸【オレイン酸】
|
|
多価不飽和脂肪酸 | n-6系脂肪酸【リノール酸】 | |
n-3系脂肪酸【αリノレン酸・EPA・DHA】 |
脂肪酸全体が、飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸とに分類できます。
不飽和脂肪酸は、ざっくりヨイモノと考えます。反対に飽和脂肪酸は、要注意人物扱いです。
ヨイモノはさらに、一価不飽和脂肪酸と多価不飽和脂肪酸に分類できます。
一価不飽和脂肪酸はあまり意識しなくても摂取できます。比較的食べ物から入手しやすいうえに、体内で生成可能です。おもにオリーブオイルや菜種油に含まれます。
多価不飽和脂肪酸は、リノール酸グループ(n-6系脂肪酸)とαリノレン酸・EPA・DHAのグループ(n-3系脂肪酸)とに分けられます。
これはどちらのグループも積極的に摂りたい油です。
と、一般的にはこのように分けられるのですが、漢字が多いうえに記号のような言葉ばかり。
苦手意識を抱く方も少なくないようです。
そこで、もうちょっと感覚的にわかりやすく分類して考えましょう。
いったん、上の表については忘れてしまってください!
林流に、ざーっくりと4つに分類していきます。
◇植物油
よく見かけるものだと、オリーブオイルや菜種油、ゴマ油などがこれに該当します。
ちょっとだけマイナーなものだと、亜麻仁油やも植物油に分類されます。
つまり、オリーブや菜種、ゴマなど、植物を原料にして圧搾して抽出した油です。
オレイン酸やリノール酸、αリノレン酸が多く含まれているのが特徴です。
オレイン酸は体内でも生み出される栄養素のひとつで、血中コレステロール値を下げる、といわれています。
リノール酸は、人間が体内で生み出すことができない成分です。そのため「必須脂肪酸」と呼ばれます。比較的いろいろな食品から摂ることができるので、さほど意識しなくても問題ありません。むしろ摂りすぎに注意したい成分です。
αリノレン酸は、亜麻仁油やエゴマ油に多く含まれます。このαリノレン酸は、体内でEPA(エイコサペンタエン酸)やDHA(ドコサヘキサエン酸)に変わります。EPAやDHAは血液サラサラ効果があることも知られていますが、食べ物からしか摂取できないのが難点。意識して摂らないとなかなか取り入れることができません。
なお、EPAもDHAも魚に含まれる脂でもあるので、そちらかも積極的に摂取してみてください。
◇魚の油
EPAやDHAと呼ばれる脂質がこれに当たります。
先ほど書いたように、EPAとはエイコサペンタエン酸のこと。DHAは、ドコサヘキサエン酸のことです。
まとめてn-3系多価不飽和脂肪酸ともいいます。
表にも書いていますが、今回はこの名称はまあ覚えなくてもいいかな、と思います。
ただ、不飽和脂肪酸と飽和脂肪酸の違いは知っておくといいですよ。簡単に言ってしまえば以下のようになります。
- 不飽和脂肪酸…人間の体内でよい働きをするもの。基本的に身体によいので食べてよし、とされるもの(乱暴にまとめちゃうと、ですが)。
- 飽和脂肪酸…食べ物からも得られるが、体内でも生成可能。とくに意識しなくても摂りすぎる傾向があるので、避けておいてちょうどよい感じ。
さて、EPAとDHAに話を戻しましょう。
これらの脂はざっくりとまとめると、血液サラサラ効果を期待できます。「魚は動物性だからよくないのでは?」というご質問をいただいたこともありますが、EPAとDHAだけは別。これは積極的に摂りたい脂です。
また、近年の日本人に不足している油でもあります。
血栓を予防するはたらきがある、ともいいます。血栓とは血管のなかで血液が固まってしまう状態のこと。つまり、血液ドロドロの成れの果てです。
◇動物性脂肪
動物といっても、主に肉類を想定しています。
ベーコンなど、肉の白い部分。そして、バターや生クリームなどに含まれる油脂がこれにあたります。
こちらは、魚とは異なり血液ドロドロの原因になるといわれています。
いわゆるLDLコレステロールを増やしてしまうのです。
LDLコレステロールとは、「悪玉コレステロール」とも呼ばれるものです。
悪玉とはよく名付けたな、といつも感心するんですよ、わたし。
悪玉って聞いたら、絶対イイモノだとは思わないよね~と。
悪だよ、悪。
これ、絶対に悪さするやつだろう、と思うよね、誰でも。つまり、言葉ってそのくらい効果があるんですよ。
そして、言葉どおり「摂りすぎ注意」と言われる脂の種類です。
コレステロールについては、この下で改めて書きますので、しばしお待ちを。
◇硬化油
硬化油と聞いて、「ああ、あれね」と思う方はもしかしたら少数派かもしれません。そのくらい耳馴染みのない言葉です。
ただ、別の言い方をすると、多くの方が「知っている!」と反応するかもしれません。
それは…マーガリンやショートニング。
マーガリンもショートニングも聞いたことはありませんか?
そうですね、市販のパンやお菓子に含まれています。
「見えない脂」と表現する先生もいるくらいです。つまり、そのくらい加工品のなかに忍者のように潜んでいます。気が付くと食べてしまっている油脂です。
この硬化油にはトランス脂肪酸が多く含まれています。問題はこのトランス脂肪酸です。
トランス脂肪酸は基本的に「人工的につくられた脂」です。微量ですが、自然界にないわけではありません。でも、一般的には工業用につくられています。
トランス脂肪酸は常温では固体です。しかも、溶け出す温度(融解温度)が46.5度とかなり高め。これは何を意味するかというと、人間の体温でも融けないということです。つまり、体内でも固体のままでいられるということです。
そして、不飽和脂肪酸の一種です。飽和脂肪酸とは異なり、不飽和脂肪酸は血液中のコレステロールを増やす、と言われています。
近年、トランス脂肪酸による弊害が注目されています。
たとえば…
- LDLコレステロールの増加(悪玉コレステロールの増加)
- 冠動脈性疾患のリスク増
- 肥満(これはふつうの脂質の摂りすぎでも起こります)
- アレルギー性疾患のリスク増
- 低体重児出産増
- 次世代への影響の懸念(胎児や乳児への影響が心配されているという意味)
すべてのアレルギー性疾患がトランス脂肪酸のせいだ、と糾弾したいわけではありません。低体重児が生まれる原因のすべてがトランス脂肪酸だというのは、ちょっと乱暴でしょう。
しかし、世界的にトランス脂肪酸が生む弊害については研究が進んでおり、WHO(世界保健機関)では制限(廃止)するべきという発表をしているのも事実です。
実際に世界には「廃止」や「使用禁止」を決定した国も少なからずあります。食品表示義務のルールを定めて、消費者が選べるようにしている国もあります。
実は日本はちょっと遅れています。もともと世界的に見れば国全体の摂取量が少なめだったことも理由なのでしょうけれど、一人の消費者としては気になるところです。
自分の食生活に関していえば、「国の基準」や「WHOの規制」とは関係なく、自分の感覚で決めていいと(個人的に)考えます。だから、わたしはトランス脂肪酸を多く含むマーガリンやショートニングを避けています(できるだけね)。
健康云々以前に、単純に美味しくないから(笑)。
マーガリンやショートニングよりも、バターのほうが美味しいでしょう?
ただ、それだけ。
もっともバターも摂りすぎはいけないと思っていることは、前述のとおりです。こちらは動物性の脂ですからね。誘惑に負けやすいけれど(これがわたしのダメなところ)。
■コレステロールってなに?
油(脂)をテーマにした本などを手にすると、ほぼ確実に耳にするのが「コレステロール」という言葉。
コレステロールとは、そもそも身体のなかでどんな役割を果たしているのか、というところから始めましょう。このブログでも先ほどからちょいちょい登場している言葉です。
コレステロールとは、脂質の一種です。油(脂)の一種です。
身体のなかでいうと、脳にも肝臓にも神経組織にも含まれています。血液にも含まれています。そして、細胞壁を構成しています。
要するにコレステロールがなければ、細胞壁の材料がなくなってしまう、というわけです。とても大切な成分です。
さらに、女性ホルモンや男性ホルモンをつくり出す原料にもなります。
実はコレステロールは、人間の体内で生み出されることがほとんどです。コレステロールを含む食事をとった場合、身体の内側で生成されるコレステロールを減らすなどして調整できるようになっています。
それでも、摂りすぎると血液中のコレステロールが増えます(コレステロール値が高くなる、ともいいます)。
ところで、コレステロールには2つのタイプがあります。
- LDLコレステロールと呼ばれる「悪玉コレステロール」
- HDLコレステロールと呼ばれる「善玉コレステロール」
この2つです。
LDLコレステロールが問題です。先ほど書いたように「悪」ですからね、イメージしやすいでしょう? 悪(笑)。
このLDLコレステロールは増えすぎると、血管壁に入り込んで酸化します。すると、酸化型LDLと呼ばれるようになります。
これは血管壁にとどまり、貯まっていきます。すると、当然ですが、血管が狭くなります。
血管が狭くなること。
これこそが、問題です。
狭い血管は詰まりやすく、心筋梗塞や脳血管疾患の原因になるとも言われています。
ただ、先ほど書いたようにコレステロールは不足していてもいけません。
細胞壁の成分が不足することで、血管そのものが弱くなったり、免疫力が低下したりします。それはそれで、脳出血やがんのリスクが高まるというデータもあるほどです。
とくに女性の場合、更年期になると女性ホルモンのバランスが崩れます。エストロゲンと呼ばれる女性ホルモンが減ることによって、いくつかの弊害が起こります。そのひとつが、コレステロール値の上昇です。
更年期に見られる症状は、ほかにもいくつかありますので、参考までに以下に例をあげます。
「例」と書いたのは、更年期の症状に関してはかなり個人差があるので、すべての人に当てはまるわけではありません。あくまでも例として受け取ってください。
- 骨粗しょう症
- ホットフラッシュ
- 寒気
- 動悸
- 情緒不安定
- 涙もろい
- イライラしやすい
- 浮腫み
- しびれ
- 排尿障害
油(脂)の話から更年期の女性の身体に起こる変化へと話題が移ってしまいましたが、コレステロール値と女性ホルモンが無関係でないという意味で、やはり更年期になると食べ物にはこれまで以上の注意が必要だと言えます。
■それでも気になる油の量 減らしたいときのヒント
ここまでお読みいただいたところで、皆さんはどう感じられたでしょうか?
「もうちょっと油をとっても大丈夫」と感じた方もいれば、「気をつけよう」と思われた方もいると思います。
もし、後者であるなら(油脂を控えようと思ったなら)、日頃の食生活でできる工夫について以下にご紹介します。ぜひヒントにしてみてください。
◇洋食より和食
厚生労働省も言っていますが、相対的に洋食よりも和食のほうが油脂を控えやすいです。
もちろん、和食だって油を使った食材はあります。
それでも、油を使わずに調理しやすいのです。
たとえば、サラダを思い浮かべてください。洋風にいただこうとすると、ドレッシングを使いますよね? これには油を使っています。
ところが、同じ野菜の副菜であっても、おひたしにすれば油を使用する必要がありません。
無理やりでないところが、和食のよいところです。
とはいえ、完全にゼロにはしないでくださいね。
とくに女性の場合、肌がカッサカサになることもありますよ。カサカサよりは潤いを!
というわけで、油ゼロは避けてください。
◇物足りなさはだしと噛むことでカバー
人によっては油を減らした(ゼロはダメです!)料理では物足りないと感じる方もいるでしょう。
満足感がない食事は長続きしません。それどころか、反動でドカ食い! という恐ろしい結果を生むことも。
そこで、満足感を得るために提案したいのが、
- だし
- 噛む
のふたつのキーワードです。
だしは旨味。
塩分過多になることを防げることで知られていますが、それだけではありません。やはり油(脂)特有のコクがないぶん、旨味でカバーしましょう。旨味には、滋味深い味わいがあるので満足度を得やすいという特徴があります。
噛む。
人間は咀嚼することで脳に「食べていますよ」「食べましたよ」と指令を送ります。
また、食べ始めて約20分で満腹中枢が刺激されるというデータもあります。
ゆっくり噛んで食べれば、これもまた満足度に繋がります。
満足することは、幸福感に通じるものがあると、わたしは個人的に考えています。
赤ちゃんも満足すると、にっこりご機嫌ですよね? それと同じです。
いくつになっても、満足はご機嫌な状態に繋がっていると思うのです。
油を控えた食事を考えている方は、食事が苦行にならないように満足できる着地点を見つけてみてはいかがでしょうか。
さて、ベジ楽では、このように野菜以外にも、皆さんが知りたい食材についてもお話をしています。
料理教室ではありますが、単に食べるだけではありません。
皆さんの「食べたい」と「選びたい」を刺激する学びがたっぷりです。
帰り道に野菜を買いたくなる料理教室です。
そして翌日には、野菜の力で朝から全力ハッピー! 自分に自信を持てる料理を学べます。
もちろん、ご家族に自信を持って食べてもらえるひと皿です。
コース受講にご興味のある方は、まずは体験レッスンとして「はじめてレッスン」にチャレンジしてみてください。
「ゆるベジらく膳料理ってどんな感じなのかしら?」「15種類もの野菜をどう食べるの?」「コースがどんなふうに進んでいくのかしら?」「コースに興味はあるけれど、続けていけるかしら?」などなど…疑問をすべて解消していただけます。
しかも、メニューはレギュラーレッスンと同じ!
ぜひご一緒に、自信を持てるゆるベジらく膳料理を楽しみましょう!
さて、ベジ楽ではブログに書かれいるような食材や調理器具に関するマニアな話を毎週火曜日に配信しています。
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