日本で唯一の「ゆるベジらく膳やさい料理教室」【ベジ楽】の林佳代子です。
福岡・姪の浜で今日も「ゆるベジらく膳料理」を楽しんでいます。
今日のテーマは「みそ味噌ミソ」です。
レシピを書いていて、ふと迷うことがあります。
それは調味料のこと。
自宅でレッスンしている場合には、「これを使います」「こんな味です、ちょっと試してみましょう」と実際のモノに触れていただくことが多いです。
やはり舌で感じることで、より正確に伝わりますし、同時に「自分の使用しているものとの違い」を実感できるからです。
マガイモノを推奨はしませんが(まっとうに作られていないもの、といってもいいのかな)、それぞれ食べ慣れた調味料がいちばん落ち着くだろうと考えているので、調味料に正解はほぼありません。これじゃないとダメといったルールはないのです。
ルールはありませんが、味噌としょうゆはクセモノだと思っています。
いろいろなタイプがあって、どうしても仕上がりを左右してしまうからです。
Contents
■手前味噌って、やっぱりアルアル
味噌の場合、「手前味噌」という言葉から連想するとわかりやすいと思います。
手前とは、辞書(旺文社 国語辞典)によると
1-①自分の前。そのものより自分に近い所。1-②他人の目の前。他人に対する体裁。1-③茶の湯の作法・様式。
2-①事象の代名詞。2-②対称の人代名詞。
と、あります。
これが「手前味噌」となると
自分で自分をほめること。自慢。
と変化します。
これ、すごーく興味深くないですか?
わたしは興味深いです。
なぜなら、味噌はそれぞれ作り手によって違うこと。自分が作った味噌がいちばん美味しいんだ、と誰しもが(多くの人が)思っていること、を示していると感じるからです。
確かに、こういってはなんですが、わたしも自分で仕込んだ味噌がいちばん好き(笑)。
皆さんはいかがですか?
ご自身で味噌をつくっている方は同じように感じられるのではないでしょうか。
もうひとつ、子供の頃から食べている味噌がある方は、なんだかんだと食べ慣れた味が落ち着くと感じられるのではないでしょうか。
この子供の頃に食べて記憶している味噌って、なかなか頑強です。これはレッスンをしていても感じるのですが、皆さん記憶しているんですね、子供の頃の味を。
そして時間と共にちょっとだけ美化されてもいます。だから、懐かしい味は、心も丸くします。やわらかな気持ちにさせます。
だから、その方にとって故郷の味が、意外と美味しさの基準になっていることは少なくありません。
■味噌の種類と地域性
ひと口に味噌といってもいろいろな種類があります。
と、ここまでは先ほどまで書いていたとおりです。自分で仕込むか、仕込まずに買うか。
この区別の仕方もあります。
が、しかし。
ここではもう少しアカデミックに(?)、より深く味噌について学んでいきましょう。
味噌の分類方法は、いくつかあります。
◇色で分ける
赤と白に分類できます。
赤…赤い色(明るいレンガ色にも見えます)の味噌をざっくりひとまとめにした方法。具体的には麦みそ、豆みそ、江戸みそ、仙台みそなどがあります。
白…白は赤に対して全体が白っぽい色の味噌をまとめて呼ぶ際に使います。人によっては黄色っぽい色も白味噌に分類します。
◇産地で分ける
昔から味噌は各地域で脈々とつくられてきました。
だから、地域差がとてもあるのです。これだけ流通が発達して、地方野菜は産地以外でも楽しめるようになって、鮮魚だって年がら年中楽しめるようになったというのに、味噌だけではしっかり地域色を主張します。
また、これは流通のおかげではあるのですが、今はいろいろな地域の味噌を大手のスーパーマーケットなどで購入できるようになりました。
以下にあげたのは、あくまでも一例です。
江戸みそ…文字どおり江戸近辺で食べられてきた味噌。
仙台みそ…東北地方に伝わる味噌。塩分濃度が高め。
信州みそ…近年、もっとも多く食べられている味噌のひとつ。大手メーカーさんの味でもある。
名古屋みそ…三州みそや八丁みそとも。赤く、やや酸味があるのが特徴。いわゆる「赤だし」で使われることの多い味噌。
讃岐みそ…香川県でつくられる味噌。四国では入手しやすい。白い色と、低い塩分濃度が特徴。甘味噌。
◇麹で分類する
そもそも味噌とは、大豆を蒸し、塩と麹を加えて発酵させたものです。
麹の種類によっても、味わいや色が異なります。使っている麹の種類によって分類することができます。
米みそ…米麹を使った味噌。醸造時間によって甘いタイプも辛いタイプも存在する。もっとも一般的なタイプ。
豆みそ…豆麹をつかった味噌。八丁味噌が代表的で、たまり味噌もこれに当たる。
麦みそ…麦麹をつかった味噌。九州エリアでよくみられる。麦の線が見えるのが特徴。やや甘め。
ざーっと書き出してみましたが、いろいろですよね。
皆さんが日頃から愛用しているのはどんなタイプでしょうか。
わたしは米麹でつくるので、いつもは「米みそ」を使っています。
色は白と赤の中間くらいです。
ただ、昨年仕込んだ分はすでに食べきってしまったので、今は市販のものを購入しています。これは米麹と麦麹の両方を使っているタイプです。やや甘めです。
今年も仕込むつもりではいたのですが、大豆(購入先は決めています)が不作だったとかで味噌はつくれないかなぁ、と考えています。
そうはいっても、味噌が欲しい! 手作りしたい! となって急に別の大豆を仕入れて仕込むかもしれません。それはまぁ、おいおい。
もし、ご自身が日頃召し上がっている味噌がわからないという場合は、ぜひパッケージをチェックしてみてください。
「へぇ」と、自分の好みを発見する機会になるかもしれませんよ。
■転勤族 味噌事情
我が家のように転勤を繰り替えている家庭の場合、意外と味噌の仕入れ先(作る場合は、材料の入手先)が一定でないことがままあります。
わたしは、引っ越すとまず最初にその土地の味噌を試します。なぜなら、食いしん坊だから。
というより、「どんな味が伝わっているのだろう」と興味があるからです。
地元の醸造会社をチェックして、まずは味わってみます。
東京から福岡に引っ越してきた際にも同じことをしました。
なめてみて、「あ、あまーい」とビックリしたのを覚えています。
佐賀に引っ越した時も同様です。まずは、近所散策をしながらお買い物スポットをチェックしつつ、味噌もチェック。
引越しの後の密かなお楽しみになっていることは確かです。
■結局 どの味噌を選ぶ?
ここまでいろいろな味噌について書いてきました。
もしかしたら、皆さんの頭の中には「結局、どれを選ぶの?」という疑問がわいているかもしれません。わたしが皆さんでも同じです。
いちばんいいのは、手づくりに挑戦することですが、そうも言っていられない方もいるでしょう。お仕事や子育てでお忙しい方もいるでしょうから。
作らない方には、「地元の味噌」をおすすめします。
その土地に古くから伝わっている味噌をまずはひとなめしてみてください。
子供のころからその土地で過ごしている方は「ああ、この味!」と懐かしくも嬉しい再会になるでしょうし、大人になって移り住んだ場所のものであれば「新発見!」なんてことにもなるかもしれません。
大手メーカーさんの商品はどこでも購入できます。お値段もお手頃なものが多いです。
もちろん、それでもいいのですが、せっかくなら地元の味にぜひチャレンジしてみてください。
さらにおすすめなのが、複数の種類を同時に楽しむことです。
同じ米味噌でも熟成具合や塩分量の違いで、いろいろなタイプのものがあります。
わたしもときどきやるのですが、ひとつの密閉容器に2種類の味噌を入れます。その境目には昆布をピローンと入れます。
すると、容器をひとつ開けるだけで2つの味を楽しめます。割合を気分で変えて、より深い味わいを楽しめます。また、昆布を間に入れることで、昆布の旨味がじわじわわ~っと味噌に行き渡ります。
最高です!
これはぜひともお試しいただきたい!
■レシピに書かれている「味噌」とは?
さて、レシピのなかにも味噌はたびたび登場します。
味噌〇g といったように。
この場合の味噌は何を指しているのでしょう?
一般に信州みそを指していることが多いです(信州みそ=辛口、米麹、淡色)。
ただし、別の味噌を表すことも多いです。
その場合は、「味噌(白みそ)」や「味噌(甘いタイプ)」とはっきり記載されているので、それらを用意してください。
指定されている以外の味噌を使う場合、塩分量や甘みに差が出てしまいます。
差が出ることが、イコールNGということではないのですが、レシピ製作者がつくったものとは異なる、という理解は必要だと思います。
わたしの場合、基本的に「手前味噌」ならぬ「自分で仕込んだみそ」を基準にレシピを書いていますが、それ以外の場合はやはり他の製作者の方々と同様に区別があることを明記しています。
それから、これは余談ですが、味噌漬けに使う味噌の場合。
甘みを感じられるように調整したいときには、味噌と砂糖(もしくはみりん)の割合を1対1にすると失敗がありません。
この場合の味噌は、白みそ(讃岐みそや西〇みそのような甘いタイプ。なお、〇京みそは某味噌会社さんが作成している商品名です)を除いた味噌のこと。甘いタイプを使うときには、味噌対砂糖を2対1程度にまで調整してみてください。
味噌と同量の砂糖というと、人によってはビックリされます。
実際にレッスンでつくると、「結構入りますね」と感想を口にされる方もいます。
でも、実はそのくらいでちょうどよいのです。
中途半端に入れるよりは、しっかり甘みをプラスして奥深い味わいを楽しんでいただけたらなぁ、と常々思っています。
■味噌は「煮えばな」って?
味噌汁をグラグラと沸騰させてはいけない、という話を耳にしたことはありませんか?
おばあちゃん世代に料理を教わったことのある方はご存知だと思いますが、わたしもまったく同感です。
味噌の粒子は沸騰させることで、互いに吸着し合って大きな粒子へと変化します。だから、グラグラ煮立たせた味噌汁は口当たりが悪くなります。
さらにいうと、旨味も大きな粒子に付着します。
つまり、本来だしがたっぷり効いているはずの味噌汁が、ザラザラのうえに旨味が(ザラザラにくっついてしまい)感じられなくなるのです。
「煮えばな」とは、グラッとゆれる程度の加熱であって、それ以上は煮立ててはいけません、という意味合いで使われる言葉です。
なお、味噌の香りは90度くらいがもっとも強く感じられる温度だとされています。
グラグラのようにそれを超えた温度になると、香りもまた感じられなくなってしまうのです。
旨味なし、香りなしの味噌汁…全然美味しそうではありませんね。
余談ではありますが、味噌汁をつくる際の参考にしてみてください。
身近な味噌をあらために見直して、さらに主体的に選ぶヒントにしていただけたら嬉しいです。
ぜひ美味しい味噌を楽しんでくださいね。
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