日本で唯一の「ゆるベジらく膳やさい料理教室」【ベジ楽】の林佳代子です。
福岡・姪の浜で今日も「ゆるベジらく膳料理」を楽しんでいます。
今日のテーマは「大根」です。
Contents
■冬は大根の美味しい季節
冬野菜の代表格・大根。
今月のレッスンでも登場しますし、先月も登場しました。それぞれ品種が異なるものを使っているのですが、とても個性的です。
わたしがレッスン中に意識して伺うようにしているのが、「いつもはどう食べているのか」「どんな料理で調理するのが好きか」といった「いつもの食べ方」です。
なぜなら、「いつもの食べ方」にはそれぞれの「この野菜はここが美味しい」という「美味しいポイント」が見え隠れするからです。
今回、大根で多く聞かれたのが「おでん」です。
確かにだしがシミシミになった大根って本当に美味しいですよね。
ひとりの方が「味のしみた大根って、幸せだなぁって思う食べ物のひとつです」とおっしゃっていましたが、「わかる!」と共感される方がとても多かったです(もちろん、わたしもその一人です)。
シミシミの大根でしみじみ幸せ。
なんだか素敵な響きですね。
ところで、大根にどくらい味がしみているのか…食べごろサインはどこで見るのか、をご存知でしょうか。
あくまでも目安ではあるのですが、わたしはこれで「あー、失敗した。外した」ということがありません。
それは、大根に網状に繊維が透けて見えるかどうか、です。
網目のように繊維が見えたら、ほどよく煮えて味も染みているサインです。逆に繊維が見えていない状態のときは、味のしみ具合はもちろんですが、トロリととろけるような舌ざわりは望めません(むしろまだ固めです)。
と、こことでこの状態をチェックするのに必要なのが、大根の皮をむいていること。
日頃から「野菜は皮も美味しい。余すところなく食べたい」と公言しているわたしですが、大根は皮をむいて調理することが多いのです。
もちろん、理由があります。先に書いたように網状の美味しいサインを見逃したくない、というのもありますが、やはり皮がないほうが美味しくいただけるからです。
■大根の皮ってむく? むかない?
野菜の皮とひと口にいっても、いろいろなタイプがあります。
ニンジンのようにとても薄く、一緒に口にしても気にならないものもあります。人参の場合、調理していても差し支えないのも一緒に食べる理由です。
また、ゴボウのように皮と内側の部分との組織がほぼ変わらないものも、丸ごと食べるのが自然です。しかも、ゴボウの場合、皮の香りがたまらなく食欲を刺激する要素でもあるので、見逃す(食べ逃す?)のはモッタイナイのです。
これらの野菜は皮ごと食べることで、栄養はもちろんですが、その野菜本来の美味しさを楽しめます。
一方、大根はどうでしょうか。
大根は皮と内側の組織が大きく異なる野菜です。
皮はとても硬く、加熱してもトロトロになるというよりはシャキッとした状態を長く保てるのが特徴です。
内側の組織は柔らかく、水分も多いのが特徴です。個性がまったく異なる、といっても言い過ぎではありません。
個性が違うから、それぞれにぴったりの食べ方をする。
わたしが大根に限らず、野菜を調理する際に意識していることです。
煮るときには、皮と内側の個性の違いを無理に一緒にしようとせず、バラバラに(皮を取り除いて)煮ます。じっくり煮て、繊維が網状になったら食べごろです。
皮は火を通しても、シャキッとした歯ごたえを楽しめるのできんぴらや、漬物がおすすめです。ポリポリシャキシャキとした音も、大根の皮の魅力のひとつです。ぜひ試してみてください。
■ゆるベジらく膳的 大根の栄養①
大根はでは「涼・甘辛」に分類します。涼は身体を冷やす、という意味があります。
おでんの大根を食べると、心も身体もポッカポカになるような気持ちになると思います。でも、実は大根自体はどちらかというと身体を冷やすはたらきのある野菜です。
大根おろしをイメージしていただくと、本来の大根の性質を感じていただけるかもしれませんね。
ただ、単なる大根おろしとして食べると、どこかヒンヤリとした涼しさを感じますが、これがみぞれ鍋のように大根おろしを鍋でクツクツ煮ていただくとヒンヤリとした印象がぐっと薄らぎます。
この「加熱して変わる印象」というのが、薬膳では意外と大切です。冷たいままいただくより、温めて(加熱して)いただくほうが「冷え効果」が弱まる、と考えるのです。
今が美味しい大根です。気になる方は、加熱して召し上がってください。
甘は胃腸をいたわり、筋肉や精神をゆるめることを意味します。リラックス効果と胃を健全に整える力があります。胃の調子が整うことから、しっかり食べて消化吸収をし、結果的に体力向上にもつながると考えることができます。
辛は、気をめぐらせる、熱を発散させるという性質があります。そのため、喉の炎症をおさえたり、痰の症状を軽くしたりするのに役立ちます。
■ゆるべじらく膳的 大根の栄養②
現代栄養学の視点から大根を考えてみましょう。
注目すべきは、「ジアスターゼ」と呼ばれる消化酵素の一種です。その名のとおり、食べ物の消化吸収に役立ちます。
ただし、ジアスターゼは熱に弱いという特徴があります。単純にジアスターゼのために大根を食べるのなら、大根おろしのように生食が最適です。
ほかにビタミンCも豊富で、風邪の予防に役立ちます。
また、大根は葉のみ緑黄色野菜に分類されます。葉にはカロテンがたっぷり含まれます。
カロテンにはいくつか種類があるのですが、大根の葉に多く含まれているのはベータカロテンです。
このベータカロテンには、粘膜を丈夫にする働きがあるので、風邪の予防に役立つとされています。
■大根の美味しい保存方法
大根は、とても大きな野菜です。
大根1本を丸ごと購入した際、一度に食べきるのは難しいでしょう。
そこで重要なのが、どのように保存して食べきるか、という視点です。
ここでは、大根の保存についてお伝えしましょう。
まず、大根を購入したら、最初にすべきことは「葉と根を切り分ける」です。
緑色の部分からざくっと切り離します。なぜなら、植物にとって「子孫を残す」という大命題を断つ必要があるためです。
大根は葉の中心部分がぐぐぐっと伸びて、花を咲かせます。アブラナ科の野菜にしては珍しく白い花です(アブラナ科の野菜はたいてい黄色の菜の花のようなかわいい花を咲かせます)。花を咲かせる目的はタネ。次世代に命をつなぐ必要があるからです。
種をつなぐためのタネを残すという工程は、植物にとってとてもエネルギーを必要とします。大根も同じです。
花をさかすために芽を伸ばすと(この状態を“とうがたつ”といいます)、根の水分や栄養をすべてそこに注ぎ込んでしまいます。逆にいえば、そのくらいエネルギーを注ぎこまないと結実しません。
すると、どうなるか。
わたしたち人間が「おいしい、おいしい」といって喜んで食べている根の部分はスカスカになってしまうのです。
あああ、これ、とっても残念な状態です。
この残念な状況を避けるため、大根には申し訳ないけれど、子孫を残すことを諦めて頂きましょう。そのための葉と根の分離です。ざくっとためらわずに切り取ります。
切り取った後は、どちらも「水分保持」を意識してください。
葉は新聞紙で包み、さらにビニール袋に入れます。それでも葉は蒸散作用があり、どんどん水分が失われていきます。水分を失った葉はシナシナになるだけでなく、黄色に変色して味も落ちます。
切り取ってからおよそ3日。その程度でしっかり食べきってください。
もし、3日で食べきれないような場合には、わたしはさっと茹でて刻んでから冷凍します。もっと時間的にも精神的にも余裕がないときには(これが意外と多い)、刻んで冷凍!
あとはお味噌汁の具にしたり、油でいためてふりかけにしたりして食べきります。
大根の根はラップで包みます。ぐるりとすべて覆ってしまいます。
ラップを外しながら切って少しずつ食べます。もっとも、わたしの場合、まとめて薄味でガーッと煮てしまい、煮汁ごと冷蔵庫で保存して少しずつ食べることもあります。おでんの具にすることもあれば、豚肉といっしょに煮ることもあります。ぶり大根にすることも。
いや、こうなると少しずつというより、「大根ラバー」としてのスイッチが入ってしまい、せっせといただきます(笑)。
■どこをどう食べたらよいのでしょう?
大根の根の部分は、場所によって味が異なります。
ざっくり分けると…
- 葉に近い部分…甘みが強く、みずみずしい【生食向き】
- とがった先端部分…辛味が強く、自己主張が強い【炒め物や揚げ物向き】
- 中央部分…中庸。両者のよいところが楽しめる【煮物向き】
たとえば大根おろしにする場合、甘みのあるみずみずしい状態を楽しみたいなら葉に近い部分を使いましょう。そばの薬味として楽しみたい場合(スッキリした辛味を楽しみたい場合)には、先端部分を選んでください。
ちょっとしたことですが、知っていて選ぶのと知らずに選べないのとでは大違いです。どちらが正しい、どちらが優れているということはありません。
ですが、特徴を知っていると、料理の幅が広がります。これこそ料理上手の道ではないかな、と個人的には考えています。
■品種が増えた大根
大根は品種がとても増えている野菜です。
正確には、昔から品種はたくさんあったのですが、市場に出回るようになってわたしたち消費者が「品種で買える野菜」になりました。
一般的なのは、青首大根と呼ばれる上部がきれいな緑色をしている大根です。スタンダードでクセのない味わいは「ザ・大根」という感じ。大根本来の味わいを楽しめます。
中国系の大根は、水気が少なく甘みが強いのが特徴です。紅芯大根などが代表格。
サラダや漬物で鮮やかな色を楽しめます。なお、赤い色はアントシアニンです。
アントシアニンは、抗酸化作用物質のひとつでアンチエイジング効果を期待できます。いいですね、アンチエイジング!
いろいろな大根が出回っているので、ぜひお気に入りの品種を探してみてくださいね。
余談ですが、わたしは青首大根の購入率が高いのですが、三浦大根が好きです。三浦大根は神奈川県に伝わる伝統野菜のひとつで、残念ながら福岡では購入できません(だから青首大根の購入率があがるのです)。
本当に美味しい品種なので、このブログを読んでいらっしゃる方で三浦大根を見つけたら、ぜひ召し上がって欲しいと思います。即買いですよ!
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