こんにちは。
やさい薬膳料理教室「ベジ楽」の林かよこです。
福岡・姪の浜で今日もやさい薬膳料理を作っています。
やさい薬膳もとい、薬膳では万物すべて陰陽で分類することを書きました。
今日はそれを体質の観点から、もう少し細かく見ていきます。
Contents
■体質を細かく分けるとどうなる? 症状で判断する
まずは、薬膳では自覚症状や陥りやすい身体の状態で体質を分類します。
実は、ひと口に薬膳といっても、考え方によって分け方や、体質の呼称が微妙に違います。ここでは、わたし自身が学んだことをベースにして体質を分類することをご了承ください。
もっとも呼称が違うだけで、ベースのところは非常によく似ていることも多いのですけれどね。
■身体の状態をチェックする
ここからはセルフチェックコーナーです。
以下に身体の状態で気になる点をあげていきます。当てはまるものをカウントしてみてください。
それぞれ1から順に番号をふってあるので、もっともたくさんカウントされた番号を覚えておきましょう。
①顔色が悪い、声が小さい、息が切れる、身体がだるい、疲れやすい、食欲がない、風邪をひきやすい、暑くないのに突然汗をかく(自汗)
②イライラしやすい、ストレスを感じる、頭痛に悩んでいる、お腹に膨満感がある、(女性の場合)生理痛や生理不順が辛い
③顔が青白い、爪が白い、冷えやすい、貧血気味だ、不眠気味だ、(女性の場合)生理不順、月経周期が短い
④肩こりや腰痛が辛い、頭痛に悩んでいる、シミやあざができやすい、(女性の場合)月経痛がひどい
⑤めまいがある、のどが渇く、ストレスを感じる、皮膚が乾燥気味、痒みを感じる、便秘気味
⑥食欲がない、吐き気や嘔吐を感じる、下痢をしやすい、むくみが気になる、身体が重くだるい、胸焼けする、息苦しい
さて、いかがでしたか?
どの番号がいちばん当てはまる状態が多かったでしょうか?
では、ここからは番号別にもう少し詳しく体質についてみていきましょう。
■疲れやすいあなたは、気虚タイプ
◇気虚とはどんな状態?
①であげた状態によく当てはまるという人は、「気虚」と呼ばれる体質です。
「気」とは活力とも呼ぶべきものです。薬膳では、気は身体を血液のようにめぐっていると考えます。
「虚」とは、不足している状態を表します。
つまり、「気虚」とは、気が不足している状態のこと。
気が不足していると、風邪をひきやすくなるともいいます。
気、大事です!
◇気虚には「補気益気」と「健脾和胃」
補気益気とは、気を補うこと。
健脾和胃とは、脾を健やかに、胃の調子を整えること。
脾とは、栄養分の消化吸収をするはたらきを担っています。また、気や血を生む役割も果たします。胃も食べたものを消化するのに必要です。
気を補うためには、食べたものをしっかり消化吸収することが大切だといっているわけです。
◇気虚におすすめの食べ物
そこで、気を補う食べ物をご紹介します。
気を補う食材とは…
ジャガイモ、カボチャ、牛肉、うなぎ、ヤマイモ、鶏肉、米、もち米など。
やさい薬膳料理教室「ベジ楽」としては…
肉じゃが、カボチャの焼き浸しなどがおすすめです。
■ストレスでイライラしやすいあなたは、気滞タイプ
◇気滞とは、どんな状態?
②であげた状態によく当てはまるという人は、「気滞」と呼ばれる体質です。
「気」は活力。
「滞」は滞ること。めぐりが悪いことを表します。
つまり、「気滞」とは気が体内をめぐらずに滞ってしまっている状態。
気がめぐらずに留まってしまうと、体内がスッキリ活動しません。イライライライラと自分の感情に振り回されてしまいます。
ただ、気滞の場合、持って生まれた体質というよりも、そのときそのときに置かれている環境によって気滞タイプになっているケースも多々あります。たとえば、仕事のストレスを感じている場合や、忙しさから食生活が乱れているような場合が、環境的原因としてあげられます。
いずれにしても、体内にため込むのはよくありません。気をめぐらせましょう。
◇気滞には「行気止痛」
気滞の状態になったら、気をめぐらせて痛みをとる、というのが一般的。
では、どのような状態のときに気はめぐるのでしょうか。
気はリラックスした状態だとめぐると考えられます。良い香り(好きな香り)に包まれていると、人はリラックスできます。
アロマや入浴剤などが効果的だと言われています。
食べ物に関しても同じで、香りのあるものはリラックス効果が高いとされています。
◇気滞におすすめの食べ物
そこで、気をめぐらせる食べ物をご紹介します。
気を補う食材とは、香りがよいものがいいですよ。
みかん、ジャスミンティー、柚子、そば
やさい薬膳料理教室「ベジ楽」としては…
そばのサラダ仕立て、柑橘類のゼリーなどがおすすめです。
■顔が青白く、貧血に悩むあなたは、血虚タイプ
◇血虚とは、どんな状態?
③にあげた状態によく当てはまるという人は、「血虚」と呼ばれる体質です。
「血」はいわゆる血液のこと。
「虚」は不足すること。
つまり、「血虚」とは血が体内をじゅうぶんめぐらずに足りない状態。
血液は、体中に酸素を運びます。細胞が活動するために欠かせない酸素を運ぶわけですから、足りなくてよいわけがありませんよね。
血液が不足することで、貧血になり、顔色もすぐれなくなってしまいます。
血は大事!
吸血鬼でなくても、血は大切です。…冗談ですけれども。やっぱり大切ですよ。
◇血虚には「養血益気」
血虚の状態になったら、血を補って(養血)気も同時に補う(益気)ようにします。
薬膳では血と気は密接に連動すると考えます。血が足りないときは、同時に気も足りなくなっていることが多いので、血と気の両方を同時に補います。
温かく消化のよいものがよいと言われています。
一方で、香辛料は気を消耗させるので、過剰に摂取しないようにしてくださいね。
◇血虚におすすめの食べ物
そこで、血を補う食べ物をご紹介します。
レバー、ホウレンソウ、人参、イカ、落花生
薬膳ではないのですが、栄養学的にも造血にプラスにはたらく食材が含まれていることに気づかれる人も多いと思います。
人は薬膳だから、マクロビだから、西洋医学だから、というカテゴリーにこだわりがちですが、わたしは個人的にはまったく気にしません。
身体にいいものはいいんだから、食べちゃお?
という感じです。
乱暴に聞こえるかもしれませんが、古くから「良し」とされるものって、多くの場合、良いのですよ。先人の知恵も現代の研究者の言葉も、自分の身体と相談しながら摂り入れられる柔軟性は望ましいと考えています。
やさい薬膳料理教室「ベジ楽」としては…
レバーペースト、ホウレンソウの落花生和えなどがおすすめです。
■肩こりや腰痛に悩むあなたは、血瘀タイプ
◇血瘀とはどんな状態?
④であげた状態によく当てはまるという人は、「血瘀」と呼ばれる体質です。
「血」とは血液のこと。
「瘀」とは、滞っている状態を表します。
つまり、「血瘀」とは、本来体中をめぐる血液がどこかで滞り、スムーズにめぐっていない状態のこと。
血液が滞っていると、酸素や栄養をじゅうぶん運ぶことができません。
手足の冷えや髪がパサパサする症状も出てきます。女性の場合、生理痛という形で不調が現れることもあります。
◇血瘀には「行気活血」
行気活血とは、気をめぐらせて血の流れも整えること。
血と気は密接に関係していると、薬膳では考えます。どちらかをおろそかにしてよいことはありません。そのため、どちらもしっかり身体をめぐるようにしましょう。
血のめぐりをよくするには、辛みのある食べ物が有効だとされています。ただし、痛みを伴う場合は、辛味は避けましょう。薄味で温かいものがおすすめです。
◇血瘀におすすめの食べ物
そこで、血を補い、気を充実させる食べ物がおすすめです。
気を補う食材とは…
ラッキョウ、ニラ、青梗菜など。食材ではありませんが、酢や酒もいいですよ。
やさい薬膳料理教室「ベジ楽」としては…
ニラの煮びたし、ラッキョウ漬けなどがおすすめです。
ただ、血瘀の人の場合、「せっかちで怒りっぽい。暑がり」といった特徴のあるなら、ラッキョウやニラを避け、ナスやニガウリ、スイカを摂るほうが身体にプラス効果を期待できます。
■便秘気味で乾燥肌のあなたは、陰虚タイプ
◇陰虚とはどんな状態?
⑤であげた状態によく当てはまるという人は、「陰虚」と呼ばれる体質です。
「陰虚」とは体内の水が少ない状態のこと。
陰は水、虚は不足をそれぞれ意味しています。
つまり、「陰虚」とは、水が不足している状態のこと。
薬膳では水は、単なる水分だけでなくリンパなどもさしています。
そう、陰虚はうるおい不足!
水が足りないことで、のぼせや発熱などが引き起こされることもあります。
急にカーッと発汗することを、「盗汗」と呼びますが、陰虚の人に見られる症状のひとつです。
この「急にカーッ」って聞いたこと、ありませんか?
そう、更年期です。男性でも女性でも更年期には、この陰虚の状態になりやすいのです。
うるおいって大事です。美容にも、健康にも。そして心にも。
◇気虚には「慈陰清熱」と「慈陰補腎」
慈陰清熱とは、陰(水)を補って、身体のなかの余分な熱を冷ますこと。
慈陰補腎とは、陰と腎を補う食材をとる、ということ。
「腎」は、「腎陽」」といって温める力と、「腎陰」といって冷やす力の両方があります。
ただ、陰虚の人に関して言えば、「腎陰」のほうが健康的に機能していない状況です。そのため熱や発汗があるのですね。
また、陰虚は気虚が悪化した結果、ということも多いです。気の充実も併せてはかっていきましょう。
◇陰虚におすすめの食べ物
そこで、陰を補う食べ物をご紹介します。
気を補う食材とは…
アスパラガス、小松菜、牡蠣、いちご、豚肉、松の実、胡麻(黒・白)など。
やさい薬膳料理教室「ベジ楽」としては…
アスパラガスの胡麻和え、豚肉と小松菜の炒め物などがおすすめです。
■だるくて下痢に悩みやすいあなたは、湿タイプ
◇湿とはどんな状態?
⑥であげた状態によく当てはまるという人は、「湿」と呼ばれる体質です。
「湿」とは体内の水が多い状態のこと。水がきれいに排出されずにとどまってしまっている状態です。
つまり、「湿」とは、水が過剰な状態のこと。
身体の中で、水に関係しているのは、脾・肺・腎です(薬膳では、ですよ)。
脾は水を生み、肺は水をめぐらせ、腎は水を出す、とされています。
つまり、この3つがスムーズでないと、水はきれいにめぐって出ることがないのです。
別の言葉にいいかえれば、利尿と発汗、気の流れを作るというのが水の状況を変えるには必要です。
よどんだ水たまりって、イイコトないですよね。それと同じです。
よどみは、身体のなかにおいてもよくないのです。
◇湿には「利水滲湿」と「発汗解表」「理気行気」
利水滲湿(りすいしんしつ)とは、利尿作用のある食材を摂って、身体の余分な水分を排出すること。
発汗解表(はっかんげひょう)とは、発汗性のある温性や辛性の食べ物で汗をかいて水分を発散させること。
理気行気(りきこうき)とは、気の流れを整えて水の流れも一緒によくすること。
湿タイプの人の場合、身体がカッカするタイプの人と冷えやすい人とに分かれます。
カッカしていても水はめぐらず、逆でも水はとどまってしまいます。逆に、水がとどまっているからカッカする、ともいえますが。そのような場合は、利尿作用のある食べ物で水を排出しましょう。
一方、冷えてしまうという人は発汗によって水を排出してください。
自分がどちらのタイプか見極めることは意外と大切。日ごろの自分と向き合ってみてください。
◇湿におすすめの食べ物
そこで、水をスムーズに排出するための食材をご紹介します。
先ほど書いたように、熱を感じる人と冷えを感じる人とでは同じ「水の排出」でも方法が異なります。前者は「利尿」、後者は「発汗」がキーワードです。したがって2つのタイプはおすすめの食材が変わります。
湿を排出食材とは…
- 利尿作用のある食べ物として ハト麦、冬瓜、小豆、黒豆など
- 発汗作用のある食べ物として ニラ、ネギ、シナモン、ショウガなど
やさい薬膳料理教室「ベジ楽」としては…
冬瓜の煮物、小豆粥、餃子などをおすすめします。
■複数のタイプに当てはまるって、あり?
ここまで、症状やお悩みによって体質を分け、それぞれの対策について書いてきました。
が、なかには「これと、これも当てはまる」と、複数の体質を持ち合わせている方もいると思います。
当然です!
これだけ多くの人間がいるのですから、たった6パターンに分けられるわけありません。
(今までの長い話はなんだったんだ、とおっしゃらずに、最後までおつきあいください)
いや、無理でしょ。たった6つなんて。
複数該当する方は、複数の体質がミックスされていると考えてください。
また、ストレスのような外的要因のあるものは、環境によって日々変化します。人によっては季節によって体質が変わり、体調も変化します。
食生活や生活習慣によっても、体質は変わります。
言い方を変えれば、現状「●●な体質」であったとしても、行動と食べ物で変えることができるわけです。
ただ、変わるにしろ、変えたいにしろ、「今の状態」をわかっていたほうがスムーズでしょう。
ざっくり自分の現状を知った後は、それに応じた食生活や生活習慣をとりいれることで、より健康的な暮らしをおくれると考えたらいいかな、と。
健康的な暮らしって、そのまま美人道でもあります。肌の調子がよかったり、お腹がスッキリしたりできるのって、元気だからこそ、です。
ベジ楽のゆる~い野菜料理が皆さんの元気やきれいの素になったら、こんなに嬉しいことはありません。