やさい薬膳料理教室「ベジ楽」の林かよこです。
福岡・姪の浜で今日も「ベジらく膳」料理を楽しんでいます。
今日のテーマは「柿」です。
Contents
■柿はふるーい果物? そしてワールドワイド?
◇柿の歴史
柿はとても古くから日本人に愛されてきた果物です。
たとえば…万葉歌人として知られる「柿本人麻呂」。柿本人麻呂の「柿本」は、彼の自宅の庭に柿の木があってそこから名乗った、という説があるほど。
ちなみに、万葉集は7世紀か8世紀にかけての和歌を集めているので…(慌ててここで古いテキストを開きました。書いた瞬間に自信がなくなるというパターンですね)8世紀半ばにできあがったとされています。
ちなみに、柿本人麻呂の和歌は小倉百人一首にもありますね。
「あしびきの山鳥の尾のしだりおの ながながし夜をひとりかもねむ」
わたしが覚えている数少ない和歌のひとつです(決して自慢できる状態ではありません…)
つまり、この時代には柿は庭木として植えられていたということです。
もっとさかのぼると、縄文時代や弥生時代の遺跡からも柿の種が発見されていますから、かなり古い時代から日本人は柿を知っていたということになります。
とはいえ、当時の柿は「渋柿」でしたので、今と同じように生で食べるようなことはありませんでしたけれどね。
◇柿はkaki
もともとは中国が原産といわれている柿ですが、欧米には日本を経由して伝わったとされています。
時代でいうと16世紀ごろ(戦国時代ですね)、ポルトガル人が日本から柿を持ち帰り、ヨーロッパに広まりました。その後、アメリカ大陸へと渡ったといいます。
柿が海外でも「kaki」で通用することは、比較的有名なお話だと思います。
フランス語ではそのままkakiですし、イタリア語でもcachiです。ちなみに、イタリア語ではcの発音は日本語のkに近いので、音にすると「カキ」あるいは「カーキ」です。
ドイツ語では「kakifrucht」で、発音は「カーキフルフト」が近いです。
とはいえ、英語では「persimmon」ですが、日本の甘柿はそのまま「kaki」で通じます。
学名は「diospyros kaki」でといい、やはり「kaki」という日本名が使われています。ちなみに直訳すると「神様の食べ物」という意味になります。
欧米ではとても高級な果物として人気があります。
色もとてもきれいで、見た目もいいですものね。
果物ですが、イタリアではチーズと組み合わせて前菜に出したり、サラダに入れたりすることもあります。たんなるデザートとしてではなく、いろいろと食べられているのですね。
ちなみに、日本史に甘柿が登場するのは、鎌倉時代の頃だといわれています。江戸時代には品種改良が進み、たくさんの種類があったとか。
今と違って、甘い物が少なかったころです。柿は多くの人をときめかせるフルーツだったに違いありません。
■甘柿と渋柿の違い
さて、ここで気になるのが甘柿と渋柿の違いです。
そもそも、柿の渋みは「タンニン」と呼ばれる成分です。緑茶にも含まれています。
このタンニンは、抗酸化作用がるされるポリフェノールの一種です。
もともと水溶性の性質を持っているので、食べるときに溶けだしたタンニンを感じてしまうことから「渋い!」となるのです。
ところが、甘柿は熟すにつれてこのタンニンの性質が変わります。水溶性だったものが、不溶性へと変化します。そうなると、食べた時にタンニンが溶け出さずに、甘さだけを感じることができるのです。
ちなみに。
甘柿を切った際に、果肉に黒っぽい点々が見えることがあると思います。この黒い点がタンニンです。
水溶性のタンニンを取り除くには、いくつか方法がありますが、一般的なのは「干し柿」ですね。美味しいですよね、干し柿。
天然のスイーツとはまさに干し柿のことを指すのではないかと思います。
ほかにもアルコールや炭酸ガスを使ってタンニンを取り除く方法もあります。
理屈は基本的に同じで、水溶性のタンニンを不溶性にするだけです。
■薬膳で柿をチェック
柿は薬膳では「寒・甘」に分類されます。
「寒」は身体をとても冷やす性質があることを示します。
甘の性質があるので、胃腸を補い、うるおいをプラスしてくれます。また、身体の水のめぐりを助けるはたらきもあります。
水がよくめぐると、むくみに関する悩みを軽くしてくれますね。
ただし、気をつけたいのが「寒」の性質です。
寒は身体を冷やすはたらきがあります。女性にとって冷えは大敵です。…何度となくブログでも書いていますが、避けたいもののひとつです。
もちろん、寒=ダメというわけではありません。
熱があるとき、喉に炎症を起こしているときなどは、この寒の性質がプラスにはたらきます。
冷え性に悩む方は食べ過ぎに気をつけるとよいでしょう。あるいは、身体を温める働きのあるものと一緒にいただく方法もいいですね。ジンジャーティーなどがその一例です。
さて、ここで先人の知恵についても触れておきましょう。
柿の寒の性質を抑えるのに、「天日に干す」という方法をとりました。
そうです、干し柿です!
天日に干すことで、寒の性質を弱めることができます。
もちろん、胃腸を補うはたらきはそのままです。ただ、干すことによって血の
めぐりをよくする力も加わります。
この血のめぐりがよくなると、最終的には肌のくすみやシミに効きますから、よいこと尽くめですね。
干し柿は渋みをとる方法のひとつとしてご紹介しましたが、甘柿もスライスして軽く天日干しすれば同じように変化します。とはいえ、ご家庭で干す場合は、半日から1日程度でかまいません。完全にカラカラになる必要はありません。
干した柿は味が凝縮されて美味しいですよ。ぜひお試しください。
なお、柿は現代栄養学からいってもとても優れた食材です。
ビタミンCがとても豊富で、食物繊維もたっぷり含まれています。
ビタミンCは、風邪の予防にも美白効果もあって嬉しいですね。食物繊維でお腹もスッキリできますよ。すばらしい!
■柿はこんな料理におすすめ
◇おすすめ柿料理
柿は切ってそのまま食べるもの。
そう思い込んでいる方も多いように思います。もちろん、それも美味しく、おすすめです。
ただ、柿は料理にもとてもよく合います。
伝統的なものだと、「柿なます」は有名ですね。白和えも比較的メジャーです。
先に書きましたが、イタリアで食べられている方法のひとつですが、チーズ類と合わせるのもいいですね。ちょっと盛りつけをがんばれば、おもてなし料理にもなります。
ちなみに、これは干し柿でも同じように作れますよ。
◇ベジ楽の変則技
ベジ楽では「アイスクリーム」を作って楽しんでいます。
とはいえ、先ほど書いたように寒の性質が気になるところなので、シナモンを少しプラスします。シナモンは身体を温める「熱」の性質があるのでぴったりです。
今回は使いませんでしたが、クローブでも同じように作れます。ちなみにクローブは「温」なのでシナモンよりマイルドですが、やはり身体を温めるはたらきがあります。
なお、こちらのレシピ、気になる方はライン@にご登録後、お問合せください。
レシピをプレゼントさせていただきます。
■柿は葉もすごいのです
柿の葉ずしをご存知でしょうか。奈良地方の郷土料理として古くから食べられていたものです。
この寿司は、柿の葉の殺菌作用を利用しているものです。また、今はサーモンなどいろいろな魚で作っていますが、昔は塩鯖を使っていました。塩漬けの鯖は海から遠く離れた地域まで安全に魚を運ぶ知恵のひとつです。
中医学では、柿の葉を「柿葉(しよう)」と呼びます。そして、咳止めやアレルギー予防に効果があるとされています。
実際に、柿の葉茶などで気軽に楽しめます。最近は、サプリメントにこの柿葉の成分を使っているものもありますね。お手軽ですが、個人的には食べ物からとるほうがよいような感覚があります。…あくまでも個人的に、ですよ。
■美味しい柿の見分け方
さて、最後は柿の見分け方、選び方についてです。
柿は色が均一のもの、ハリとツヤがあるものがおすすめです。さらに、ヘタが実に沿うようにぴったり貼りついた状態のものがおすすめです。
そして、もったときに適度な重量感があるといいですよ。
柿の旬は9~11月です。これからが盛りの時期を迎えます。
ますます美味しくなる季節ですから、ぜひ毎日の食生活にとり入れてくださいね。